ある研究によると、人工妊娠中絶が規制されている国、中でもアフリカや中南米の国では、合法化されている国と比べて、安全でない人工妊娠中絶の割合が高いという。
ニューヨークのグットマッハー研究所(Guttmacher Institute)のギルダ・セッジ(Gilda Sedgh)氏が中心となり、2008年の最新データに基づいて行われた研究によると、安全でない人工妊娠中絶の割合は、出産可能年齢にある女性千人あたり、アフリカでは28、中南米では31であった。これらの地域では、ほとんどの国で人工妊娠中絶が厳しく規制されている。これに対し、西欧や北米では千人あたり0.5未満だ。
世界保健機関(World Health Organization、WHO)の定義によると、安全でない人工妊娠中絶とは、必要な技術をもたない人によって、あるいは最低限の医療・衛生基準にも満たない環境の中で、またはその両方の条件下で妊娠が中断させられることである。人工妊娠中絶の法的な規制により、施術者を見つけることが困難となり、たとえ見つけてもその人が十分な訓練を受けている可能性は低いため、安全でない人工妊娠中絶に繋がっている、とセッジ氏は述べた。
コロンビア大学(Columbia University)の臨床的人口・家庭保健(clinical population and family health)を専門とするベヴァリー・ウィニコフ(Beverly Winikoff)教授は、ランセット誌(Lancet)の記事の中で、「望まない妊娠の中絶を望む女性は、それが違法であれ命の危険を伴うとしても、人工妊娠中絶を求め、代償を惜しまない。何十年も前から知られているこの状況が引き続き正しいことを、その研究データは実証している」と述べている。
南アフリカ
これまでの研究によれば、人工妊娠中絶が法律で規制されている国の女性のおよそ半数が、人工妊娠中絶を行ったことがあると報告している。
セッジ氏らの研究によると、安全でない人工妊娠中絶の大部分は開発途上国で行われており、2008年では、人工妊娠中絶10万件当たりの死亡数が220に上る。この数字は、米国の合法的人工妊娠中絶における比率の350倍であるという。
いくつかの国では、人工妊娠中絶を合法化したことにより、中絶による死亡や合併症の割合が減少しているとセッジ氏は述べた。
2005年の南部アフリカ医療ジャーナル誌(South African Medical Journal)に掲載された研究によると、アフリカにおいては、安全でない人工妊娠中絶の割合は南ア共和国を含む南部地域が最も低いという。また、人工妊娠中絶を原因とした死亡率は、1994年と、1998から2001年までの平均値を比べると、91%減少したという。南ア共和国は、1997年に人工妊娠中絶を合法化した、アフリカでは唯一の国である。
また、同研究の著者は、2009年にネパール政府が8郡を対象に実施した調査研究にも言及している。ネパールでは、2002年に人工妊娠中絶が合法化されている。同調査研究の結果によると、人工妊娠中絶を原因とする合併症が、1998年では病院で治療を行った妊産婦の疾病の54%を占めていたのに対して、2008年度では28%に減少したことが確認された。
東欧
ニューヨークに拠点を置くリプロダクティブ・ライツ・センター(Center for Reproductive Rights)によると、中南米において人工妊娠中絶が合法とされているのは、ガイアナ共和国、仏領ギアナ、キューバそして米国プエルトリコ準州のみである。世界的には、人工妊娠中絶を規制なく許可している国は58カ国であり、世界の人口の39%に相当する。一方、世界人口の26%を占める68カ国では、人工妊娠中絶は禁止、または命の危険がある場合のみ許可されており、健康保持や社会経済的理由から許可しているのは73カ国であるという。
東欧では、ピルや子宮内避妊具などの効果的な産児調節法が普及しておらず、また小家族が好まれていることにより、人工妊娠中絶の割合は、出産可能年齢の女性千人あたり43と世界で最も高い。しかしながら、ポーランドを除く全ての国で人工妊娠中絶が合法化されている東欧では、安全でない人工妊娠中絶の割合は千人あたり5と、他の開発途上国と比べてはるかに低い。
指針
「人工妊娠中絶の自由を認める法律だけでは、安全な人工妊娠中絶は保証されない」とセッジ氏は言う。その法律に関する知識を人工妊娠中絶の提供者と女性に普及させること、人工妊娠中絶のための保健サービス指針を策定すること、そして、提供者が、訓練を受けた上で人工妊娠中絶サービスを提供しようという意欲を持つことなどが必要とされている、と同氏は続けた。
2008年の世界の人工妊娠中絶の割合は、2003年の千人あたり28という数字に比べてほとんど変化がなかった。研究によると、避妊薬(具)の利用が落ち込んだためである。
「質の高い家族計画サービスに更なる投資を行わなければ、この傾向は続くであろう」と同氏は述べた。
( Source : Makiko Kitamura, Bloomberg, 20 January 2012)