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HIVと性感染症

HIV感染の大多数は性感染、または妊娠、出産、授乳からの感染です。 私たちは防止と治療、ケアと支援、そしてHIVに関連した汚名や差別の削減に向けて活動し、また、各地域や各国ごとに、この病気特有の問題に対応しています。

Articles by HIVと性感染症

世界保健機関のロゴ

WHOが公表した最新の避妊法ガイダンスに関するIPPF声明

1990年代初めより、ホルモン剤を使用した避妊薬によって女性のHIV感染リスクが上がるかどうかについては、決定的なエビデンス(科学的な証拠)がありませんでした。これは、HIV感染率の高いサハラ以南アフリカのような地域では、非常に重要な問題です。この問題を解決すべく、ECHO試験と呼ばれる無作為臨床試験が各地で行われました。試験では黄体ホルモンのみを使用したメドロキシプロゲステロン酢酸筋注デポ剤(DMPA-IM)、皮下埋め込み式の避妊インプラント(Jadelle)、銅付加子宮内避妊具(IUD)という、避妊効果が高く可逆性のある3つの避妊法を比較しました。   その結果が2019年6月13日付のLancet誌に掲載されましたが、3つの避妊法の間ではHIV感染リスクに統計的に著しい相違は見られませんでした。IPPFの国際医学諮問委員会(IMAP)はこの件に関する声明とテクニカル・ブリーフを公表し、ECHO試験の結果と、現地で活動するMAと関係機関に向けた勧告を掲載しました。   また、ECHO試験の結果を踏まえ、世界保健機関(WHO)はHIV感染リスクの高い女性を対象にした適切な避妊法に関するガイダンスを更新し、2019年8月29日に公開しました。WHOは今回、HIVリスクの高い女性は、DMPA-IMとDMPA-SCなど黄体ホルモンのみを使用する避妊薬を含む、すべての避妊法を制限なく使用できる(避妊薬使用のための医学適用基準(MEC)カテゴリー1)としました。この評価は2017年3月に公表されたWHOの同ガイダンスから変更しています。前回は、HIV感染リスクの高い女性に対して黄体ホルモンのみを使用する避妊薬はMECカテゴリー2とされ、その理由として「理論的、もしくは実証的なリスクがこの避妊法による恩恵を上回る」とされていました。新しく判明した疫学的、生物学的な事実と関連情報が増えたことにより、過去の判断が覆された形です。 ECHO試験の結果とWHOのガイダンス更新によって、誰もが公平に様々な避妊法を選べるよう、避妊法の提供ルートと入手機会を継続的に拡充し確保していく必要性があることがわかりました。WHOはまた、HIVとSTIs(性感染)の検査と予防サービスの重要性を強調しています。これには、可能であれば、家族計画とHIV/STIsサービス、そしてその他のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)サービスを統合して提供する方法も考えられます。 IPPFはWHOが今回、SRHサービスを提供する組織に対して、証拠に基づいたガイダンスと勧告を公表したことを歓迎します。IPPFは今後も、さらに多くの避妊法を選択できるよう、女性と少女たちの権利拡充を支援し、HIV感染のリスクによって避妊法の選択肢が制限されないことを求めます。  IPPFは今回の結果を受け、すべての人々が自分の性と生殖の健康に関する選択をすることが、HIV/STIs予防を含む包括的なパッケージの一部であり、権利に基づいた情報とサービスの提供の重要性を再確認しました。ECHO試験の結果、横断的な配慮のない保健プログラムのリスクが明らかになりました。IPPFはSRHサービスの不可欠な分野としてHIV/ STIs の予防と治療を理解し、その理解に基づいたサービス提供を増やしていきます。

Leaving no one behind
04 December 2018

誰一人取り残さない:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

すべての人のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)へのユニバーサル・アクセスがユニバーサル・ヘルス・カバレッジの、ひいては持続可能な開発目標(SDGs)の実現に必須です。すべての女性、男性、子ども、思春期の青少年の精神的、身体的な健康を守り、誰も差別を受けることなくSRHRが実現される世界こそ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジが目指すべきものです。SRHRサービスを求める人々が直面する障害を取り除き、支払い可能な金額で、通える範囲で、質の高い、適切なサービスが提供されなければなりません。 『誰一人取り残さない:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Leaving no one behind - Universal health coverage and sexual and reproductive health and rights)』と題されたこの小冊子は、IPPFによる文献レビューによって明確になった事実をまとめています。結論では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(SRH)への公的支出が足りていないことが指摘されています。中でも、貧困家庭において医療費の自己負担が多く、経済的困窮を招いている例、ジェンダーに基づく暴力への対応といった、命にかかわるSRHサービスが必須ヘルスケアパッケージに含まれていない例、保健施設の運営状態が悪く、脆弱で周縁化されたコミュニティを支援できていない例など、具体的な例が挙げられています。 IPPFの最新の報告を、ぜひご一読ください。

チピリ・ムレムフウェさん。資金が途絶えるまで、IPPFザンビア(PPAZ)が実施するUSAIDオープンドア・プロジェクトのサービスデリバリー・マネージャーを務めていた

「貴重な時間が失われている」

2017年11月、 IPPFザンビア(PPAZ)は、米国国際開発庁(USAID)の援助を受けているプログラムをすべて中止にせよ、という知らせを受けました。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)の影響によるものです。グローバル・ギャグ・ルールの再導入によって、PPAZは活動資金の46%を失いました。グローバル・ギャグ・ルールについてはこちらをご参照ください。   「私が(USAIDの援助を受けたPPAZ「オープンドア・プロジェクト」の)サービスデリバリー・マネージャーの仕事を失った時、自分の一部が死んだように感じました。それほどに情熱を傾けていたのです。いつかすべての人が、スティグマ(汚名)も差別も受けずに、特に公共の保健医療機関で、医療サービスを自由に受けられる日が来ると信じています。それが現実になること。もっとも脆弱でHIV感染のリスクが高い人々(キー・ポピュレーション)が、スティグマも差別も、逮捕される恐れもなく、総合的な 保健医療サービスを受けられる日が来るのを望んでいます」とチピリさんは話します。  グローバル・ギャグ・ルール グローバル・ギャグ・ルールの再導入によってPPAZのUSAIDオープンドア・プロジェクトへの援助が完全に途絶えました。 さらにチピリさんは続けます。「プロジェクトを始めた時には、突然、援助がなくなるとは思ってもいませんでした。援助の停止までに一定期間、例えば1年間の猶予があって、その間に事業を終わらせ、PPAZが背負ってきた責任を引き受けてくれるパートナーにプロジェクトを引き継げると思っていました」   プロジェクトが中止されるということは、それまでの成果、つまりキー・ポピュレーションにおけるHIVと性感染症(STIs)の感染者数を減少できていたこと、が取り消されてしまうという意味です。これは、ザンビアにおいてHIV感染者数を減らすために絶対に必要とされた成果でした。 「貴重な時間が失われている。国としての目標があります。2020年までにUSAIDが設定した90/90ゴール  を達成しなければなりません(訳注:90/90ゴールとは、2020年までにHIVと共に生きる人々の90%が自分の感染状態を知ること、HIV陽性と診断された人の90%が持続的に抗レトロウイルス薬による治療を受けていること、また抗レトロウイルス薬による治療を受ける人々の90%がウイルスの活動を抑制できていること、などを定めた国連合同エイズ計画(UNAIDS)の目標)。ザンビアではHIVの脅威に打ち克つため、さらに大きなビジョンを設定しています。2030年までにHIVを公共の脅威でなくするというものです。しかし、今回のような障害 が重なると、これらの目標が達成できません」  「キー・ポピュレーションは一般の人々ともつながっています。男性と性行為をする男性にはパートナーがいます。結婚していることもあります。彼らのネットワークを辿らなければ、HIVとSTIが一般の人々にも広まり、結果としてすべての人がリスクにさらされるでしょう」 その他の影響としては、キー・ポピュレーションの脆弱性が高まったこと、キー・ポピュレーションに育っていたピア・サポーターへの投資が無駄になったこと、キー・ポピュレーションがPPAZの提供していた安心、安全な受診場所に行けなくなったこと、などがあります。  安心と安全がなくなる時 「安心と安全という面では、キー・ポピュレーションの人はよく知らない医療機関を気軽に受診することができません。PPAZのクリニックは理想的な環境でした。誰も不要な質問をせず、誰もが自由にかかれるクリニックだったからです。現在、プロジェクトでは住宅を借りています。USAIDがサービスを提供する場所として住宅を借りてくれますが、住宅はクリニックとは違いますし、サービスの持続性という意味では影響があります」 「PPAZは1972年からサービス提供をしていますが、その持続性にも影響があります。プロジェクトによってPPAZがキー・ポピュレーションに汚名と差別を受けさせずにサービスを提供し続けられるようになればいいと思っていました。しかしこれは不可能になりました。私にとっては機会の損失です」 ザンビアのAIDS/HIV国家戦略枠組2017-2021では、HIV/AIDSの蔓延を止める目的のため「誰も取り残さない」という点に非常に重きを置いています。 「誰一人取り残してはならない。HIV新規感染者をゼロまで削減するのでなければ、我々の夢、ビジョンは実現しない。誰が悪いのか指を差し合う暇はない。公衆衛生のアプローチを使い、ザンビアの人々のHIV感染リスクをなくさなければなりません」

BOFWAに通っていた患者の一人、ハバツワネさん。セレビ・ピクウェの自宅近くで
24 7月 2018

コミュニティの人々の命に関わるHIVケアが停止する現実

IPPFボツワナ(BOFWA)は1988年以来、国内で8つのクリニックを運営し、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスに関連した医療サービスを提供してきました。クリニックではヒト免疫不全ウイルス(HIV、エイズウイルス)、性感染症検査と治療、子宮頸部検診、避妊、家族計画の助言とカウンセリングなどを実施しています。 BOFWAは、若者と脆弱な人口に対する身近で親しみやすく、安全で使いやすいサービスをボツワナで提供する数少ない団体です。人口およそ230万人のボツワナのHIV感染率は18.5%です。 サービスの利用と汚名(スティグマ) ボツワナでは、政府の運営するクリニックでも無料でHIV治療を受けられます。しかし、脆弱なコミュニティに住むHIV感染者に対する医療ケアは、個々のニーズに適したものでなければならないと、ウナ・ングウェニャ BOFWA事務局長は言います。「政府はすべての国民にヘルスケアを提供しますが、必ずしも必要とする人全員に質の高いサービスが平等に提供されるわけではありません。女性のセックスワーカー、男性と性行為をする男性、LGBTI(性的少数者)グループの人など、汚名(スティグマ)と差別のため医療サービスを受けられない人々がいます。BOFWAはこのような人たちのニーズを認識し、寄り添い、配慮したケアを提供してきました」   2016年、米国国際開発庁(USAID)の援助を受けて開始したリンケージ(Linkages)プログラムでは、男性と性行為をする男性や女性のセックスワーカーなど、脆弱で周縁化されたコミュニティの人々への支援を行う組織とBOFWAが連携してサービスを提供しました。支援団体が接触した個人がBOFWAクリニックに紹介され、HIV検査と治療を受けることができました。これら脆弱なコミュニティのHIV感染率は非常に高く(例えば、女性のセックスワーカーのHIV感染率は61.9%)、治療を受ける人の割合が低いことがわかっています。   リンケージ・プログラムを通じて、何百人ものHIV陽性の人たちが治療を受けられるようになりました。「BOFWAと協働するようになってから……陽性の診断を受けた人たちが治療を受けられるようになり、継続して支援できるようになりました。2017年9月に支援対象とした90名のうち93%を治療につなげることができ、ウイルスの活動を抑えられています。BOFWAの助けがなければできなかったことです」と話すのは、ボツワナの首都、ハボローネで女性のセックスワーカーを支援するンカイケラ・ユース・グループ(Nkaikela Youth Group)のスタッフ、カモゲロ・マリベさん(26)です。  グローバル・ギャグ・ルール   2017年1月に再導入されたグローバル・ギャグ・ルールの影響で、リンケージ・プログラムは廃止しなければなりませんでした。現地のコミュニティに不可欠な医療ケアと支援を届けていたプログラムを続けることができなかったのです。   グローバル・ギャグ・ルールによってUSAIDの援助がなくなったために、セレビ・ピクウェという小さな鉱山の町にあるBOFWAクリニックが閉鎖されました。ハバツワネさん(44)は閉鎖による被害を受けた多くの女性の一人です。夫を失ったハバツワネさんは、3人の子どもを育てるためにセックスワークをするほかありませんでした。HIV陽性になったハバツワネさんは、BOFWAクリニックで治療を受けていました。「誰も彼もが私の状態を知ってしまう政府運営のクリニックに比べて、個人情報を守ってくれることが(BOFWAクリニックの)よいところです。BOFWAスタッフとは安心して話ができました」   ハバツワネさんは政府運営のクリニックへ行くことを躊躇しています。HIV陽性ということで汚名(スティグマ)と差別を受ける恐れがあるからです。「(政府のクリニックへ)行くのが恐いです。コミュニティの人々に私の状態が知られるかも知れません。政府のクリニックでは他から隔離された場所で抗レトロウイルス薬(ARV)を投与しますが、BOFWAクリニックではそうではなく、匿名性が守られました」とハバツワネさんは言います。   ハバツワネさんは現在、地方自治体の仕事をしています。しかし、治療のために1日に何時間、ひと月に何日も仕事を休んでいては失職するのではないかと不安です。ガバツワネさんは「希望がまったくない状態」と言います。政府運営のクリニックはいつも混んでいます。というのも、廃鉱してから鉱山のクリニックに通っていたHIV陽性の患者たちが政府のクリニックに移り、スタッフに大きな負担がかかっているからです。治療を受けるために長時間、待たなければならないとガバツワネさんは言います。「午前8時に(クリニックに)行っても、出てこられるのは午後2時です。早起きしなければサービスも受けられません」   セックスワーカーの支援  首都ハボローネから北に400キロ離れたフランシスタウンでは、BOFWAが若者と周縁化されたコミュニティの人たちに配慮したヘルスケアを提供している唯一のNGOでした。BOFWAはレブガビボ(Lebgabibo)というLGBTI支援団体と、マトシェロ・コミュニティ開発協会(MCDA、Matshelo Community Development Association)というセックスワーカー支援団体とパートナーシップを結び、HIV検査と治療を提供してきました。フランシスタウンにおけるHIV感染率は、ボツワナ国内の他の地域よりも高く、23.3%です。  BOFWAクリニックは、この町のセックスワーカーたちが保健医療ケアを受けられる大切な場所でした。多くのセックスワーカーが、他のクリニックでは同様の治療とケアは受けられないと言います。政府運営のクリニックで治療を受けると個人情報が守られない恐れが高いことが、多くのセックスワーカーに医療機関へ行くことを躊躇させています。セックスワーカーたちは、現状よりも多くのサービスを受けたいと思っています。その中には暴露前予防投与(プレップ、Pre Exposure Prophylaxis、PrEP)という、HIV陰性でも感染するリスクが高い場合、予防として抗レトロウイルス薬を投与する治療法もあります。 ナイーマ・ムトゥクワさん(31)は、Legabiboのピア・アウトリーチ・ワーカーです。リンケージ・プログラムが終了したため、HIV陽性のピア仲間が通えるBOFWA以外のクリニックを探しています。「3カ月以内に治療を受けるようにと言われても、BOFWA(クリニック)が閉鎖されてもう行けません。でも(ピアたちは)新しいクリニックは居心地が悪いと言います。そのために治療を受けない人が出てきています。政府運営のクリニックでは検査も治療も受けたくない、と言うのです」 治療を止めてしまう性的少数者が出る可能性を、ナイーマさんは真剣に心配しています。  

クリニックで順番を待つ患者たち
05 December 2017

グローバル・ギャグ・ルールの影響が及ぶ中、強い決意のもと活動を続けるIPPF加盟協会のスタッフとボランティアたち

IPPF加盟協会、IPPFモザンビーク(AMODEFA)が国内で提供するヘルスサービスは、多くの人々の命に関わっています。しかし米国政府によるグローバル・ギャグ・ルールの実施で、多くのヘルスサービスの存続が危ぶまれています。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策とも)は、中絶のカウンセリングと手術に関連した活動を行う団体が実施するすべての保健プログラムに対し、米国政府の援助金をすべて停止するという政策です。 AMODEFAは200万ドル、つまり年間予算の60%の活動資金を失います。総人口3,000万人のうち、約12%がエイズと共に生きる人々だと考えられるモザンビークでは、HIVとの闘いにおいてこの資金がなくなれば深刻な影響を与えると予想されます。 IPPF加盟協会、IPPFモザンビーク(AMODEFA)が国内で提供するヘルスサービスは、多くの人々の命に関わっています。しかし米国政府によるグローバル・ギャグ・ルールの実施で、多くのヘルスサービスの存続が危ぶまれています。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策とも)は、中絶のカウンセリングと手術に関連した活動を行う団体が実施するすべての保健プログラムに対し、米国政府の援助金をすべて停止するという政策です。 AMODEFAは200万ドル、つまり年間予算の60%の活動資金を失います。総人口3,000万人のうち、約12%がエイズと共に生きる人々だと考えられるモザンビークでは、HIVとの闘いにおいてこの資金がなくなれば深刻な影響を与えると予想されます。

ミラン・カダカさん

音楽を使ってHIVに対する汚名と闘うネパールの大学生

ミラン・カダカさんが10歳の時、両親をHIVによって亡くしました。「両親が亡くなった時、深い孤独を感じました。僕のことを思ってくれる人はもう世界中に誰もいないのではないかと思いました」とミランさんは言います。「誰かの愛を受けている子どもたちを見ると、両親が生きていれば、自分もあのように愛されただろうに、と思いました」 ミランさんのように、インドへ出稼ぎに行った親を祖国ネパールで待つ子どもは、何千人もいると言われます。ミランさんは10歳までインドで育ちましたが、母親をエイズ関連の疾患で亡くしました。母親の死後、家族でネパールに帰国しましたが、8カ月後に今度は父親が亡くなり、一人、祖母の下に残されたのです。 「両親の死後、自発的にHIV検査を受けに行き 、体内にウイルスがあるかどうかを確かめました」とミランさん。「HIV陽性という診断を受けてから、少しずつそのことが地域の人たちに知られるようになり、やがてひどい差別を受けました。学校では友人が一緒に座ってくれず、中傷やいじめもありました」さらに、「家では寝室を分けられ、寝具も、食器も、髪をとかす櫛も別のものを用意されました。一人きりで眠らなければなりませんでした」 ミランさんが、地域に住むラクシュミ・クンワルさんに出会ってから、事態が好転し始めました。ラクシュミさんは、自身もHIV陽性の診断を受け、地元パルパでHIVと共に生きる人々を支える活動に専心することを決意した女性です。IPPFネパール(FPAN)の在宅コミュニティ・ケア・モビライザーをしています。 孤児になった 幼い少年がつらい思いをしていることを知り、ラクシュミさんはミランさんの家族や先生たちと話し合いました。これを受けて、大人たちはクラスメートにも話をしました。「ラクシュミさんが話しに行ってから、先生たちは助けてくれるようになりました」とミランさん。「HIVについての(正しい)知識がわかると、学校の友達も仲良くしてくれ、ものを一緒に使ってくれるようになりました。学友たちはこう言ってくれました。『ミランにはもう誰もいないから、僕たちが一緒にいなくちゃ。ミランに起きたことが僕たちに起きない保証はないだろう?』と」 ラクシュミさんはミランさんが小中学校から大学に進学するまで見守り、勉学に励むよう、応援してきました。「ラクシュミさんはもはや母親以上の存在です」と言います。「実の母は僕を産んでくれましたけど、大きくなるまで面倒を見てくれたのはラクシュミさんです。実の母が生きていたとしても、ラクシュミさんのようにできたとは思えません」 ミランさんは学業では常にオールAの評価を受け、クラス上位にいました。そして優秀な生徒として、無事に学校を卒業できたのです。 現在、21歳のミランさんは忙しく、充実した毎日を送っています。大学の学生生活、FPANの在宅コミュニティ・ケア・モビライザーの活動、そして始めたばかりの音楽活動があるからです。教育学の学部生としてタンセン大学に通っているとき以外は、ケア・モビライザーとして地域の村を訪ね、住民にHIVの予防と治療について説明したり、避妊具を配布したりしています。HIVと共に生きる子どもたちを支える活動もしています。同じ境遇の子どもたちに、自分が両親を亡くし、差別を受けた経験から、幸せで成功した今の人生にたどり着くまでの道のりを聞かせています。 「この地域でHIVと共に生きる子どもたちは40名います」とミランさん。「僕は彼らに会って話をし、彼らの状況を知り、必要な支援があればつなぎます。彼らにはこう話しています。『あの時、もし僕があきらめていたら、今の僕にはなっていない。だから君たちもあきらめるな。君の人生を歩んでいくのだよ』と」 ミランさんのストーリーを動画にまとめました。ぜひご覧ください(英語)。      

農村で行われるHIV検査
06 12月 2017

モザンビークのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケアにグローバル・ギャグ・ルールが落とす大きな影

「私たちは『ムハニィッス』と呼ばれます」と話すのはアルベルティナ・マチャイエイエさんです。マチャイエイエさんはIPPFモザンビーク(AMODEFA)の看護師で、ムハニィッスとは、現地で使われるシャンガーン語の「救世主」を意味します。 マチャイエイエさんは19年間、アクティビストのチームを率いています。アクティビストたちはHIV陽性と診断されたボランティアで、チームは首都マプト郊外にある、最も貧しい人々の住むコミュニティに行きます。HIVと共に生きる人たちに必要な医療ケアを届け、AIDSに関する啓発をするためです。2017年には、検診、治療、食料配布、カウンセリングなどの活動を、1千世帯を超えるHIVと共に生きる人々に提供しました。 しかし、訪問活動など、人々にとって欠くことのできないAMODEFAのヘルスサービスが、グローバル・ギャグ・ルールの導入によって続けられなくなる恐れがあります。メキシコシティ政策として知られるグローバル・ギャグ・ルールによって、保健プログラムに拠出されていた米国政府の援助が、中絶に関連した活動を行う団体には一切、提供されなくなるからです。 実施されれば、AMODEFAの予算の60%にあたる200万ドルの拠出がなくなり、モザンビークにおけるHIVとの闘いに対して計り知れないほどの影響を及ぼすことでしょう。人口3,000万人ほどのモザンビークでは、推定で12%近くがHIV陽性だと言われています。「HIV、結核(TB)、マラリア、家族計画関連のプロジェクトに参加していた50万人ほどの利用者に影響があると推定されます」とAMODEFAのサントス・シミオーネ事務局長は、マプトの本部で話します。     マチャイエイエさんのチームではボランティアの数を、60人から半減させなければなりませんでした。何人かのボランティアは訪問活動を続けるそうですが、交通費が出ない状況では、必要な治療やカウンセリングを受けられない利用者が増えるだろうとマチャイエイエさんは言います。 パルミラ・エノーク・テンベさんのような女性にとっては、訪問活動がまさにライフラインとなっています。テンベさんと同居する2人の息子はHIV陽性で、さらに4人の孫がいます。テンベさんは自身がHIV陽性だとわかった時、恐怖のあまり何も考えられなくなったと言います。「何もしたいとも思えず、部屋で座って泣くことしかできませんでした」。しかし、AMODEFAから抗レトロウイルス薬を使った治療とカウンセリングを受けたことで、元気を取り戻せた と言います。自給自足のための農業を再開し「将来の計画を立てています。病気だとわかってもすぐに死ぬわけではないから」と前向きになりました。 モザンビーク南部の3省に点在する20カ所のAMODEFA運営のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・クリニックのうち、14カ所は2017年10月末までに閉鎖を余儀なくされます。各クリニックで看護師たちが1日に対応する患者は300人前後です。ほとんどが少女からの家族計画についての相談ですが、HIVなど性感染症の検査とカウンセリングを求める人々も多くいます。 「このようなサービスセンターを除けば、若者たちが情報を得る場所はありません」と話すのは、クリニックのトゥア・セナ・プログラムの責任者、ナリア・チャンバルさんです。クリニックの閉鎖により「望まない妊娠、早婚と児童婚、HIVその他の性感染症の感染の増加が起こる」と予想します。若いうちから学校に通えなくなる少女たちが増え、安全でない中絶も増える恐れがあります。 AMODEFAはモザンビーク保健省と緊密に連携し、AMODEFAが提供する家族計画、HIV、結核、マラリアの各プログラムが、政府の保健サービスをそれぞれ補完し、支援するよう調整しています。「AMODEFAの活動がストップしたら、政府の医療機関に大きな負担となります」とシミオーネ事務局長。「全国的に困難な状況になるでしょう」。 影響が甚大なのは最も貧しく、脆弱なコミュニティに住む人々です。モザンビークで最も大きく、貧困率も高いナンプラ省の農村地帯の住民を対象にしたAMODEFAの「チャレンジTB」プログラムが存続の危機にあります。1年ほど続いた同プログラムでは、一番近いクリニックが自宅の80キロ先にあるような結核患者の所までスタッフが足を延ばし、診断と治療をしてきました。 ボランティアとスタッフが自転車とバイクで駆け回り、遠隔地のコミュニティで結核の啓発と検査を続けることで感染の実態が見えてきました。AMODEFAが活動する8つの地区で結核の検査を実施したところ、2017年1-3月で1,318人、4-6月で2,106人、7-9月で3,154人まで受診者が増えました。検査を受けた人の半数以上は結核と診断されています。 「これだけでも大きな成果ですが、まだやることが山積しています」と話すのはプロジェクトのモニタリングと評価の責任者、マリア・テレーサ・ド・ファティマさんです。新規の結核感染者は今後2年間は増え、そこから減少していくとファティマさんは考えます。 特にリスクが高いのは、現在、抗結核薬を服用している2,000人ほどの患者です。抗結核薬は、6カ月間、毎日薬を飲み続けなければなりません。身近に薬を出してくれるクリニックがなくなってしまい、服用を中断すると体内で薬の効かない耐性菌ができる可能性があります。耐性菌の根治はさらに難しくなります。新規の患者が5人、治療を始めたばかりのナハとモルプラ地区で働くボランティアのマリオ・ヴィランクさんが言います。「(利用者たちは)AMODEFAに強い信頼があります。10人が治るのを見たので、今は深く信用されています」。 このような信頼関係が最初から築けていたわけではありません。マチャイエイエさんがマプトで HIV家庭訪問プログラムを始めた当初は、車を目立たないように停め、AMODEFAの人間だとわからないように利用者のコミュニティに行かなければなりませんでした。「人々はHIVを恐れていましたから、私の訪問も恐れられたのです」。 モザンビークの人々の態度が変わり、タブーが破られるまでには19年もかかりました。人々がやっと恐れの代わりに希望を抱き始めた矢先に、AMODEFAの活動と人々の命がグローバル・ギャグ・ルールの影に脅かされようとしています。 AMODEFAのたゆみない活動について知りたい方はこちら

IPPFタイでボランティア活動をするジヘ・ホンさん

「クリニックまで来られないセックスワーカーを訪ねます」タイのHIVと性感染症予防活動

一般的に、セックスワーカーはHIV(エイズウイルス)と性感染症(STI)感染リスクが高い環境で仕事をします。セックスワークが違法なタイでも、ほかの多くの国と同様、セックスワークが黙認されています。 ジヘ・ホンさんはIPPFタイ(PPAT)のボランティアです。ジヘさんは「HIVと性感染症予防チーム」の一員として、首都バンコクとその周辺で活動しています。ボランティア活動を始めて1カ月で、ジヘさんは感染リスクが高い風俗産業で働く女性たちを17回、訪問しました。 「(風俗で働く女性たちは)ターゲットグループの一つと言っていいと思います」とジヘさん。「女性たちの中には、タイ語も話せず、タイ政府が認める身分証を持っていない人もいます。若い女性ばかりです」 HIVと性感染症予防チームは、バンコクにあるPPATのセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス部門に属しています。このチームは、中高生やMSM (男性と性行為をする男性)のグループ、風俗業の経営者など、市内の様々な組織と協力関係を築き、アウトリーチ活動を通じて直接、働く人たちの話を聞きに行きます。 「セックスワーカーの人たちはクリニックで検査を受ける時間がないかもしれません。だから私たちが仕事場まで訪ねます」とジヘさんは言います。「通常、1時間ほどの教育的な話合いの場を持ち、復習を兼ねた活動をします。みんなで楽しみながら学ぶ時間です」 ジヘさんのいるチームは、イラストや画像で説明がある、大型の展示教材を持っていきます。そこには様々なSTIの症状や兆候が細かく図解され、HIV/AIDSとSTIの症状の克明な写真もあります。STIに感染するとどうなるのか、誰にでもわかりやすく説明されています。 「梅毒」「淋病」「性器ヘルペス」「腟カンジダ症」などの説明書きや写真を見た参加者からは、大きな反応があります。「みんなショックを受けますが、若い人は特にそうです。参加者はたくさん質問しますし、心配していることを話してくれます」とジヘさんは振り返ります。 PPATの冊子や小冊子の内容は、ショックを与えるようなものだけではありません。セクシュアリティと性的指向などの概念についても解説し、PPATが行うセミナーで話される性の多様性と平等についての理解を深める助けになります。 セミナーの後でHIVと梅毒の即日検査が希望者に実施されます。タイ国籍があれば、政府の補助によって年に2回まではHIV検査は無料です。有料でも、HIV検査は1回140バーツか4米ドル(500円弱)、梅毒検査は50バーツ(約170円)で受けられます。 「HIVの即日検査は30分ほどで結果が出て、99%正確です」とジヘさん。「即日検査と同時に看護師が採血します。このサンプルをラボに送ってより精度の高い検査をします。これは2~3日かかります」 検査の際、コンドームの正しい装着法をペニスの模型を使ったデモンストレーションで教えます。帰り道、受講者はPPATからのお土産の入った袋をもらいます。中にはコンドーム、PPATクリニックの電話番号が書かれた名刺、コンドームを入れるポーチが入っています。 ジヘさんは韓国の出身ですが、米国南部ルイジアナ州ニューオーリンズにあるテュレーン大学の大学院で公衆衛生学を学んでいます。進学後、PPATでボランティア活動を始めました。 「(活動を通して)世界中の人々は平等であることを実感しました。年齢、性別、性的指向、国籍、宗教や職業に関わらず、必要とする人は誰でも保健医療サービスを受けられるようにすることが重要です」  

A young female client helped by a project via IPPF

グローバル・ギャグ・ルールの適用拡大が及ぼす世代を超えた悪影響

米国による グローバル・ギャグ・ルール(GGR)の適用範囲の拡大( https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2017/05/270866.htm)により、世界でもっとも貧困に苦しむ女性と少女たちの何百万という命が脅かされると、テウォドロス・メレッセIPPF事務局長は訴えています。 グローバル・ギャグ・ルール(GGR、メキシコシティ政策とも言われている)の適用範囲が拡大されれば、地球上で貧困に苦しむ多くの女性たちが、命にかかわる医療ケアを受けることができなくなります。それにより、意図しない妊娠、安全でない中絶が増え、何千人もの女性が命を落とすことになるでしょう。 このままでは、適正な価格で受けられた、質の高い、包括的なリプロダクティブ・ヘルスケアが、世界中で提供できなくなります。提供できなくなるサービスは、避妊指導や避妊法、ジカウイルス感染症に関する保健情報、母子保健サービス、出産後の母子のケア、生殖器のがん治療、HIV感染の予防や治療など、多岐にわたります。 GGRの影響をもっとも受ける、周辺化された社会に暮らす女性たちは、もっとも貧困で、医療サービスを受けにくい僻地に住む、25歳未満の女性たちです。人々が必要とする保健医療サービスが提供できなくなるために、何百万という人々が取り残され、意図しない妊娠や疾病、SRHに関連する死に追いやられるでしょう。 テウォドロス・メレッセIPPF事務局長のコメントです。 「グローバル・ギャグ・ルールの適用範囲は前代未聞の規模で拡大されます。社会の片隅に追いやられ、医療サービスへのアクセスが非常に限られる人々、貧しい女性やコミュニティが取り残される状況を作ることは、考えられる限りで最悪の事態です」 「GGRに基づいて米国が行動すれば、IPPFが加盟協会(MA)を通じて各国で提供し、女性たちが本当に必要とするサポート、カウンセリング、家族計画サービスなど、その国ではまったく合法な活動が不可能になります。IPPFの活動はやめるわけにはいきません。一度、活動を止めてしまえば多くの命が失われ、その影響は何世代にもわたって続くでしょう」 「女性であればだれでも、妊娠や出産など、自分の身体に起こることを、安全で合法に決めることができるべきだとIPPFは強く信じています。今回の要求は、強いられた妊娠の増加や、場合によってはもっとひどい結末などを招くだけであり、IPPFはこれを受け入れることはできません」   IPPFの試算では、GGRの実施によってIPPFへの資金援助が停止されることによって、妊産婦死亡が2万人、意図しない妊娠が480万件、安全でない中絶が170万件、世界中でさらに増加することになります。   GGRの適用範囲が拡大されると、IPPFが途上国で作り上げてきた保健医療分野のパートナーシップが壊される可能性があります。MAが現地の医療機関等と緊密に連携し、築いてきたリファラル(照会)や患者に対するサポートなどのサービスができなくなるからです。保健医療を提供する側と受ける側が持っていた選択肢が狭まり、双方にとって不利益が生じることになります。 米国国際開発庁(USAID)は、何十年も家族計画と公衆衛生プログラムを強く支持し、援助してきました。例え限られた期間だったとしても、USAIDがGGRの実施に従うことで、USAIDがもっとも得意としてきた活動の中で、多くの命を救うことができなくなります。莫大な活動予算が無になり、USAIDにとっても大きな損失になることでしょう。 今回の政策決定により、IPPFはその活動の中核を担う資金のうち、1億ドルを失います。MAを代表し、IPPFは1月に「IPPFがグローバル・ギャグ・ルールに署名しない理由」という緊急声明も発表しました。そちらもご参照ください。

フィジーでIPPFとUNFPAがサイクロン被害に遭った住民たちを支援する様子

IPPF事務局長の声明:米国政府のUNFPAへの資金援助停止に対するIPPFの見解

米国政府による国連人口基金(UNFPA)向け拠出金の停止に関する発表を受け、「(この決定は)世界中の女性や少女たちにとって絶望的な結果をもたらすだろう」と、国際家族計画連盟(IPPF)事務局長であるテウォドロス・メレッセは述べました。 メレッセ事務局長の発言は以下の通りです。 「米国政府が援助打ち切ろうとしている資金は、世界でもっとも貧困で、もっとも脆弱な立場にある女性や少女たちのヘルスケアのために使われるはずでした」 「それは避妊、妊産婦ケア、安全な出産をサポートするためだけではなく、ジェンダーに基づく暴力を防ぐためのプログラムにも使われるはずの資金でした」 「IPPFはUNFPAと緊密に連携して、世界中でこうしたケアを提供するのがもっとも困難な状況の中で活動してきました。特に、世界でもっとも貧困な国における、もっとも貧しい地域で活動をしてきました。このような環境に生きる女性や少女たちは特に脆弱な状況にあるため、この資金の打ち切りは、彼女たちに悲惨な 結果をもたらすでしょう」 メレッセ事務局長はさらに、「新しく発足した米国政権による、世界中の女性や少女たちのヘルスケアに対する、今年2回目の打撃です」と加えました。 「グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)の再導入により、既にIPPFや他の保健医療機関向けの米国の資金援助が打ち切りとなり、避妊サービス、HIVプログラム、ジカ熱の集団感染対策などの活動ができなくなってしまいました」 「(今回の政策によって)IPPFが失う見込みの1億米ドルの資金があれば、2万件の妊産婦死亡を防止できるはずです。また、この資金カットにより480万件の意図しない妊娠、170万件の安全でない中絶が起きる可能性があります」 「一つ、明確にしたいことがあります。米国政府によって打ち切られつつある拠出金は、いずれも中絶の実施や、強制的な生殖に関する政策の助長に費やされるものではありません。これは、(リプロダクティブ・ヘルスにかこつけた理由付けは)資金カットのための隠れみのでしかありません」 「権利に基づいて行動する組織として、IPPFはUNPFAをはじめとする保健医療機関や人権団体と協力し、何千万という女性と少女たちに対し、避妊法をいつ、どのように使うかを選ぶ権利を守り、命に関わるヘルスサービスへのアクセスを保障します」 「UNFPAは各国政府に働きかけ、持続可能な開発目標(SDGs)など、世界共通で合意した政策において協力するように求めています。グローバルな目標の達成は、すべての人々のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスを守るためにも絶対に必要なことです」 「米国で政権が発足してから3カ月のうちに、重要な保健サービスを、もっとも必要としている人々に届けるための努力が2度も否定されたこときわめて遺憾に思います。この政治的決断によって、何万人もの命が失われることでしょう」

世界保健機関のロゴ

WHOが公表した最新の避妊法ガイダンスに関するIPPF声明

1990年代初めより、ホルモン剤を使用した避妊薬によって女性のHIV感染リスクが上がるかどうかについては、決定的なエビデンス(科学的な証拠)がありませんでした。これは、HIV感染率の高いサハラ以南アフリカのような地域では、非常に重要な問題です。この問題を解決すべく、ECHO試験と呼ばれる無作為臨床試験が各地で行われました。試験では黄体ホルモンのみを使用したメドロキシプロゲステロン酢酸筋注デポ剤(DMPA-IM)、皮下埋め込み式の避妊インプラント(Jadelle)、銅付加子宮内避妊具(IUD)という、避妊効果が高く可逆性のある3つの避妊法を比較しました。   その結果が2019年6月13日付のLancet誌に掲載されましたが、3つの避妊法の間ではHIV感染リスクに統計的に著しい相違は見られませんでした。IPPFの国際医学諮問委員会(IMAP)はこの件に関する声明とテクニカル・ブリーフを公表し、ECHO試験の結果と、現地で活動するMAと関係機関に向けた勧告を掲載しました。   また、ECHO試験の結果を踏まえ、世界保健機関(WHO)はHIV感染リスクの高い女性を対象にした適切な避妊法に関するガイダンスを更新し、2019年8月29日に公開しました。WHOは今回、HIVリスクの高い女性は、DMPA-IMとDMPA-SCなど黄体ホルモンのみを使用する避妊薬を含む、すべての避妊法を制限なく使用できる(避妊薬使用のための医学適用基準(MEC)カテゴリー1)としました。この評価は2017年3月に公表されたWHOの同ガイダンスから変更しています。前回は、HIV感染リスクの高い女性に対して黄体ホルモンのみを使用する避妊薬はMECカテゴリー2とされ、その理由として「理論的、もしくは実証的なリスクがこの避妊法による恩恵を上回る」とされていました。新しく判明した疫学的、生物学的な事実と関連情報が増えたことにより、過去の判断が覆された形です。 ECHO試験の結果とWHOのガイダンス更新によって、誰もが公平に様々な避妊法を選べるよう、避妊法の提供ルートと入手機会を継続的に拡充し確保していく必要性があることがわかりました。WHOはまた、HIVとSTIs(性感染)の検査と予防サービスの重要性を強調しています。これには、可能であれば、家族計画とHIV/STIsサービス、そしてその他のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)サービスを統合して提供する方法も考えられます。 IPPFはWHOが今回、SRHサービスを提供する組織に対して、証拠に基づいたガイダンスと勧告を公表したことを歓迎します。IPPFは今後も、さらに多くの避妊法を選択できるよう、女性と少女たちの権利拡充を支援し、HIV感染のリスクによって避妊法の選択肢が制限されないことを求めます。  IPPFは今回の結果を受け、すべての人々が自分の性と生殖の健康に関する選択をすることが、HIV/STIs予防を含む包括的なパッケージの一部であり、権利に基づいた情報とサービスの提供の重要性を再確認しました。ECHO試験の結果、横断的な配慮のない保健プログラムのリスクが明らかになりました。IPPFはSRHサービスの不可欠な分野としてHIV/ STIs の予防と治療を理解し、その理解に基づいたサービス提供を増やしていきます。

Leaving no one behind
04 December 2018

誰一人取り残さない:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

すべての人のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)へのユニバーサル・アクセスがユニバーサル・ヘルス・カバレッジの、ひいては持続可能な開発目標(SDGs)の実現に必須です。すべての女性、男性、子ども、思春期の青少年の精神的、身体的な健康を守り、誰も差別を受けることなくSRHRが実現される世界こそ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジが目指すべきものです。SRHRサービスを求める人々が直面する障害を取り除き、支払い可能な金額で、通える範囲で、質の高い、適切なサービスが提供されなければなりません。 『誰一人取り残さない:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Leaving no one behind - Universal health coverage and sexual and reproductive health and rights)』と題されたこの小冊子は、IPPFによる文献レビューによって明確になった事実をまとめています。結論では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(SRH)への公的支出が足りていないことが指摘されています。中でも、貧困家庭において医療費の自己負担が多く、経済的困窮を招いている例、ジェンダーに基づく暴力への対応といった、命にかかわるSRHサービスが必須ヘルスケアパッケージに含まれていない例、保健施設の運営状態が悪く、脆弱で周縁化されたコミュニティを支援できていない例など、具体的な例が挙げられています。 IPPFの最新の報告を、ぜひご一読ください。

チピリ・ムレムフウェさん。資金が途絶えるまで、IPPFザンビア(PPAZ)が実施するUSAIDオープンドア・プロジェクトのサービスデリバリー・マネージャーを務めていた

「貴重な時間が失われている」

2017年11月、 IPPFザンビア(PPAZ)は、米国国際開発庁(USAID)の援助を受けているプログラムをすべて中止にせよ、という知らせを受けました。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)の影響によるものです。グローバル・ギャグ・ルールの再導入によって、PPAZは活動資金の46%を失いました。グローバル・ギャグ・ルールについてはこちらをご参照ください。   「私が(USAIDの援助を受けたPPAZ「オープンドア・プロジェクト」の)サービスデリバリー・マネージャーの仕事を失った時、自分の一部が死んだように感じました。それほどに情熱を傾けていたのです。いつかすべての人が、スティグマ(汚名)も差別も受けずに、特に公共の保健医療機関で、医療サービスを自由に受けられる日が来ると信じています。それが現実になること。もっとも脆弱でHIV感染のリスクが高い人々(キー・ポピュレーション)が、スティグマも差別も、逮捕される恐れもなく、総合的な 保健医療サービスを受けられる日が来るのを望んでいます」とチピリさんは話します。  グローバル・ギャグ・ルール グローバル・ギャグ・ルールの再導入によってPPAZのUSAIDオープンドア・プロジェクトへの援助が完全に途絶えました。 さらにチピリさんは続けます。「プロジェクトを始めた時には、突然、援助がなくなるとは思ってもいませんでした。援助の停止までに一定期間、例えば1年間の猶予があって、その間に事業を終わらせ、PPAZが背負ってきた責任を引き受けてくれるパートナーにプロジェクトを引き継げると思っていました」   プロジェクトが中止されるということは、それまでの成果、つまりキー・ポピュレーションにおけるHIVと性感染症(STIs)の感染者数を減少できていたこと、が取り消されてしまうという意味です。これは、ザンビアにおいてHIV感染者数を減らすために絶対に必要とされた成果でした。 「貴重な時間が失われている。国としての目標があります。2020年までにUSAIDが設定した90/90ゴール  を達成しなければなりません(訳注:90/90ゴールとは、2020年までにHIVと共に生きる人々の90%が自分の感染状態を知ること、HIV陽性と診断された人の90%が持続的に抗レトロウイルス薬による治療を受けていること、また抗レトロウイルス薬による治療を受ける人々の90%がウイルスの活動を抑制できていること、などを定めた国連合同エイズ計画(UNAIDS)の目標)。ザンビアではHIVの脅威に打ち克つため、さらに大きなビジョンを設定しています。2030年までにHIVを公共の脅威でなくするというものです。しかし、今回のような障害 が重なると、これらの目標が達成できません」  「キー・ポピュレーションは一般の人々ともつながっています。男性と性行為をする男性にはパートナーがいます。結婚していることもあります。彼らのネットワークを辿らなければ、HIVとSTIが一般の人々にも広まり、結果としてすべての人がリスクにさらされるでしょう」 その他の影響としては、キー・ポピュレーションの脆弱性が高まったこと、キー・ポピュレーションに育っていたピア・サポーターへの投資が無駄になったこと、キー・ポピュレーションがPPAZの提供していた安心、安全な受診場所に行けなくなったこと、などがあります。  安心と安全がなくなる時 「安心と安全という面では、キー・ポピュレーションの人はよく知らない医療機関を気軽に受診することができません。PPAZのクリニックは理想的な環境でした。誰も不要な質問をせず、誰もが自由にかかれるクリニックだったからです。現在、プロジェクトでは住宅を借りています。USAIDがサービスを提供する場所として住宅を借りてくれますが、住宅はクリニックとは違いますし、サービスの持続性という意味では影響があります」 「PPAZは1972年からサービス提供をしていますが、その持続性にも影響があります。プロジェクトによってPPAZがキー・ポピュレーションに汚名と差別を受けさせずにサービスを提供し続けられるようになればいいと思っていました。しかしこれは不可能になりました。私にとっては機会の損失です」 ザンビアのAIDS/HIV国家戦略枠組2017-2021では、HIV/AIDSの蔓延を止める目的のため「誰も取り残さない」という点に非常に重きを置いています。 「誰一人取り残してはならない。HIV新規感染者をゼロまで削減するのでなければ、我々の夢、ビジョンは実現しない。誰が悪いのか指を差し合う暇はない。公衆衛生のアプローチを使い、ザンビアの人々のHIV感染リスクをなくさなければなりません」

BOFWAに通っていた患者の一人、ハバツワネさん。セレビ・ピクウェの自宅近くで
24 7月 2018

コミュニティの人々の命に関わるHIVケアが停止する現実

IPPFボツワナ(BOFWA)は1988年以来、国内で8つのクリニックを運営し、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスに関連した医療サービスを提供してきました。クリニックではヒト免疫不全ウイルス(HIV、エイズウイルス)、性感染症検査と治療、子宮頸部検診、避妊、家族計画の助言とカウンセリングなどを実施しています。 BOFWAは、若者と脆弱な人口に対する身近で親しみやすく、安全で使いやすいサービスをボツワナで提供する数少ない団体です。人口およそ230万人のボツワナのHIV感染率は18.5%です。 サービスの利用と汚名(スティグマ) ボツワナでは、政府の運営するクリニックでも無料でHIV治療を受けられます。しかし、脆弱なコミュニティに住むHIV感染者に対する医療ケアは、個々のニーズに適したものでなければならないと、ウナ・ングウェニャ BOFWA事務局長は言います。「政府はすべての国民にヘルスケアを提供しますが、必ずしも必要とする人全員に質の高いサービスが平等に提供されるわけではありません。女性のセックスワーカー、男性と性行為をする男性、LGBTI(性的少数者)グループの人など、汚名(スティグマ)と差別のため医療サービスを受けられない人々がいます。BOFWAはこのような人たちのニーズを認識し、寄り添い、配慮したケアを提供してきました」   2016年、米国国際開発庁(USAID)の援助を受けて開始したリンケージ(Linkages)プログラムでは、男性と性行為をする男性や女性のセックスワーカーなど、脆弱で周縁化されたコミュニティの人々への支援を行う組織とBOFWAが連携してサービスを提供しました。支援団体が接触した個人がBOFWAクリニックに紹介され、HIV検査と治療を受けることができました。これら脆弱なコミュニティのHIV感染率は非常に高く(例えば、女性のセックスワーカーのHIV感染率は61.9%)、治療を受ける人の割合が低いことがわかっています。   リンケージ・プログラムを通じて、何百人ものHIV陽性の人たちが治療を受けられるようになりました。「BOFWAと協働するようになってから……陽性の診断を受けた人たちが治療を受けられるようになり、継続して支援できるようになりました。2017年9月に支援対象とした90名のうち93%を治療につなげることができ、ウイルスの活動を抑えられています。BOFWAの助けがなければできなかったことです」と話すのは、ボツワナの首都、ハボローネで女性のセックスワーカーを支援するンカイケラ・ユース・グループ(Nkaikela Youth Group)のスタッフ、カモゲロ・マリベさん(26)です。  グローバル・ギャグ・ルール   2017年1月に再導入されたグローバル・ギャグ・ルールの影響で、リンケージ・プログラムは廃止しなければなりませんでした。現地のコミュニティに不可欠な医療ケアと支援を届けていたプログラムを続けることができなかったのです。   グローバル・ギャグ・ルールによってUSAIDの援助がなくなったために、セレビ・ピクウェという小さな鉱山の町にあるBOFWAクリニックが閉鎖されました。ハバツワネさん(44)は閉鎖による被害を受けた多くの女性の一人です。夫を失ったハバツワネさんは、3人の子どもを育てるためにセックスワークをするほかありませんでした。HIV陽性になったハバツワネさんは、BOFWAクリニックで治療を受けていました。「誰も彼もが私の状態を知ってしまう政府運営のクリニックに比べて、個人情報を守ってくれることが(BOFWAクリニックの)よいところです。BOFWAスタッフとは安心して話ができました」   ハバツワネさんは政府運営のクリニックへ行くことを躊躇しています。HIV陽性ということで汚名(スティグマ)と差別を受ける恐れがあるからです。「(政府のクリニックへ)行くのが恐いです。コミュニティの人々に私の状態が知られるかも知れません。政府のクリニックでは他から隔離された場所で抗レトロウイルス薬(ARV)を投与しますが、BOFWAクリニックではそうではなく、匿名性が守られました」とハバツワネさんは言います。   ハバツワネさんは現在、地方自治体の仕事をしています。しかし、治療のために1日に何時間、ひと月に何日も仕事を休んでいては失職するのではないかと不安です。ガバツワネさんは「希望がまったくない状態」と言います。政府運営のクリニックはいつも混んでいます。というのも、廃鉱してから鉱山のクリニックに通っていたHIV陽性の患者たちが政府のクリニックに移り、スタッフに大きな負担がかかっているからです。治療を受けるために長時間、待たなければならないとガバツワネさんは言います。「午前8時に(クリニックに)行っても、出てこられるのは午後2時です。早起きしなければサービスも受けられません」   セックスワーカーの支援  首都ハボローネから北に400キロ離れたフランシスタウンでは、BOFWAが若者と周縁化されたコミュニティの人たちに配慮したヘルスケアを提供している唯一のNGOでした。BOFWAはレブガビボ(Lebgabibo)というLGBTI支援団体と、マトシェロ・コミュニティ開発協会(MCDA、Matshelo Community Development Association)というセックスワーカー支援団体とパートナーシップを結び、HIV検査と治療を提供してきました。フランシスタウンにおけるHIV感染率は、ボツワナ国内の他の地域よりも高く、23.3%です。  BOFWAクリニックは、この町のセックスワーカーたちが保健医療ケアを受けられる大切な場所でした。多くのセックスワーカーが、他のクリニックでは同様の治療とケアは受けられないと言います。政府運営のクリニックで治療を受けると個人情報が守られない恐れが高いことが、多くのセックスワーカーに医療機関へ行くことを躊躇させています。セックスワーカーたちは、現状よりも多くのサービスを受けたいと思っています。その中には暴露前予防投与(プレップ、Pre Exposure Prophylaxis、PrEP)という、HIV陰性でも感染するリスクが高い場合、予防として抗レトロウイルス薬を投与する治療法もあります。 ナイーマ・ムトゥクワさん(31)は、Legabiboのピア・アウトリーチ・ワーカーです。リンケージ・プログラムが終了したため、HIV陽性のピア仲間が通えるBOFWA以外のクリニックを探しています。「3カ月以内に治療を受けるようにと言われても、BOFWA(クリニック)が閉鎖されてもう行けません。でも(ピアたちは)新しいクリニックは居心地が悪いと言います。そのために治療を受けない人が出てきています。政府運営のクリニックでは検査も治療も受けたくない、と言うのです」 治療を止めてしまう性的少数者が出る可能性を、ナイーマさんは真剣に心配しています。  

クリニックで順番を待つ患者たち
05 December 2017

グローバル・ギャグ・ルールの影響が及ぶ中、強い決意のもと活動を続けるIPPF加盟協会のスタッフとボランティアたち

IPPF加盟協会、IPPFモザンビーク(AMODEFA)が国内で提供するヘルスサービスは、多くの人々の命に関わっています。しかし米国政府によるグローバル・ギャグ・ルールの実施で、多くのヘルスサービスの存続が危ぶまれています。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策とも)は、中絶のカウンセリングと手術に関連した活動を行う団体が実施するすべての保健プログラムに対し、米国政府の援助金をすべて停止するという政策です。 AMODEFAは200万ドル、つまり年間予算の60%の活動資金を失います。総人口3,000万人のうち、約12%がエイズと共に生きる人々だと考えられるモザンビークでは、HIVとの闘いにおいてこの資金がなくなれば深刻な影響を与えると予想されます。 IPPF加盟協会、IPPFモザンビーク(AMODEFA)が国内で提供するヘルスサービスは、多くの人々の命に関わっています。しかし米国政府によるグローバル・ギャグ・ルールの実施で、多くのヘルスサービスの存続が危ぶまれています。グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策とも)は、中絶のカウンセリングと手術に関連した活動を行う団体が実施するすべての保健プログラムに対し、米国政府の援助金をすべて停止するという政策です。 AMODEFAは200万ドル、つまり年間予算の60%の活動資金を失います。総人口3,000万人のうち、約12%がエイズと共に生きる人々だと考えられるモザンビークでは、HIVとの闘いにおいてこの資金がなくなれば深刻な影響を与えると予想されます。

ミラン・カダカさん

音楽を使ってHIVに対する汚名と闘うネパールの大学生

ミラン・カダカさんが10歳の時、両親をHIVによって亡くしました。「両親が亡くなった時、深い孤独を感じました。僕のことを思ってくれる人はもう世界中に誰もいないのではないかと思いました」とミランさんは言います。「誰かの愛を受けている子どもたちを見ると、両親が生きていれば、自分もあのように愛されただろうに、と思いました」 ミランさんのように、インドへ出稼ぎに行った親を祖国ネパールで待つ子どもは、何千人もいると言われます。ミランさんは10歳までインドで育ちましたが、母親をエイズ関連の疾患で亡くしました。母親の死後、家族でネパールに帰国しましたが、8カ月後に今度は父親が亡くなり、一人、祖母の下に残されたのです。 「両親の死後、自発的にHIV検査を受けに行き 、体内にウイルスがあるかどうかを確かめました」とミランさん。「HIV陽性という診断を受けてから、少しずつそのことが地域の人たちに知られるようになり、やがてひどい差別を受けました。学校では友人が一緒に座ってくれず、中傷やいじめもありました」さらに、「家では寝室を分けられ、寝具も、食器も、髪をとかす櫛も別のものを用意されました。一人きりで眠らなければなりませんでした」 ミランさんが、地域に住むラクシュミ・クンワルさんに出会ってから、事態が好転し始めました。ラクシュミさんは、自身もHIV陽性の診断を受け、地元パルパでHIVと共に生きる人々を支える活動に専心することを決意した女性です。IPPFネパール(FPAN)の在宅コミュニティ・ケア・モビライザーをしています。 孤児になった 幼い少年がつらい思いをしていることを知り、ラクシュミさんはミランさんの家族や先生たちと話し合いました。これを受けて、大人たちはクラスメートにも話をしました。「ラクシュミさんが話しに行ってから、先生たちは助けてくれるようになりました」とミランさん。「HIVについての(正しい)知識がわかると、学校の友達も仲良くしてくれ、ものを一緒に使ってくれるようになりました。学友たちはこう言ってくれました。『ミランにはもう誰もいないから、僕たちが一緒にいなくちゃ。ミランに起きたことが僕たちに起きない保証はないだろう?』と」 ラクシュミさんはミランさんが小中学校から大学に進学するまで見守り、勉学に励むよう、応援してきました。「ラクシュミさんはもはや母親以上の存在です」と言います。「実の母は僕を産んでくれましたけど、大きくなるまで面倒を見てくれたのはラクシュミさんです。実の母が生きていたとしても、ラクシュミさんのようにできたとは思えません」 ミランさんは学業では常にオールAの評価を受け、クラス上位にいました。そして優秀な生徒として、無事に学校を卒業できたのです。 現在、21歳のミランさんは忙しく、充実した毎日を送っています。大学の学生生活、FPANの在宅コミュニティ・ケア・モビライザーの活動、そして始めたばかりの音楽活動があるからです。教育学の学部生としてタンセン大学に通っているとき以外は、ケア・モビライザーとして地域の村を訪ね、住民にHIVの予防と治療について説明したり、避妊具を配布したりしています。HIVと共に生きる子どもたちを支える活動もしています。同じ境遇の子どもたちに、自分が両親を亡くし、差別を受けた経験から、幸せで成功した今の人生にたどり着くまでの道のりを聞かせています。 「この地域でHIVと共に生きる子どもたちは40名います」とミランさん。「僕は彼らに会って話をし、彼らの状況を知り、必要な支援があればつなぎます。彼らにはこう話しています。『あの時、もし僕があきらめていたら、今の僕にはなっていない。だから君たちもあきらめるな。君の人生を歩んでいくのだよ』と」 ミランさんのストーリーを動画にまとめました。ぜひご覧ください(英語)。      

農村で行われるHIV検査
06 12月 2017

モザンビークのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケアにグローバル・ギャグ・ルールが落とす大きな影

「私たちは『ムハニィッス』と呼ばれます」と話すのはアルベルティナ・マチャイエイエさんです。マチャイエイエさんはIPPFモザンビーク(AMODEFA)の看護師で、ムハニィッスとは、現地で使われるシャンガーン語の「救世主」を意味します。 マチャイエイエさんは19年間、アクティビストのチームを率いています。アクティビストたちはHIV陽性と診断されたボランティアで、チームは首都マプト郊外にある、最も貧しい人々の住むコミュニティに行きます。HIVと共に生きる人たちに必要な医療ケアを届け、AIDSに関する啓発をするためです。2017年には、検診、治療、食料配布、カウンセリングなどの活動を、1千世帯を超えるHIVと共に生きる人々に提供しました。 しかし、訪問活動など、人々にとって欠くことのできないAMODEFAのヘルスサービスが、グローバル・ギャグ・ルールの導入によって続けられなくなる恐れがあります。メキシコシティ政策として知られるグローバル・ギャグ・ルールによって、保健プログラムに拠出されていた米国政府の援助が、中絶に関連した活動を行う団体には一切、提供されなくなるからです。 実施されれば、AMODEFAの予算の60%にあたる200万ドルの拠出がなくなり、モザンビークにおけるHIVとの闘いに対して計り知れないほどの影響を及ぼすことでしょう。人口3,000万人ほどのモザンビークでは、推定で12%近くがHIV陽性だと言われています。「HIV、結核(TB)、マラリア、家族計画関連のプロジェクトに参加していた50万人ほどの利用者に影響があると推定されます」とAMODEFAのサントス・シミオーネ事務局長は、マプトの本部で話します。     マチャイエイエさんのチームではボランティアの数を、60人から半減させなければなりませんでした。何人かのボランティアは訪問活動を続けるそうですが、交通費が出ない状況では、必要な治療やカウンセリングを受けられない利用者が増えるだろうとマチャイエイエさんは言います。 パルミラ・エノーク・テンベさんのような女性にとっては、訪問活動がまさにライフラインとなっています。テンベさんと同居する2人の息子はHIV陽性で、さらに4人の孫がいます。テンベさんは自身がHIV陽性だとわかった時、恐怖のあまり何も考えられなくなったと言います。「何もしたいとも思えず、部屋で座って泣くことしかできませんでした」。しかし、AMODEFAから抗レトロウイルス薬を使った治療とカウンセリングを受けたことで、元気を取り戻せた と言います。自給自足のための農業を再開し「将来の計画を立てています。病気だとわかってもすぐに死ぬわけではないから」と前向きになりました。 モザンビーク南部の3省に点在する20カ所のAMODEFA運営のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・クリニックのうち、14カ所は2017年10月末までに閉鎖を余儀なくされます。各クリニックで看護師たちが1日に対応する患者は300人前後です。ほとんどが少女からの家族計画についての相談ですが、HIVなど性感染症の検査とカウンセリングを求める人々も多くいます。 「このようなサービスセンターを除けば、若者たちが情報を得る場所はありません」と話すのは、クリニックのトゥア・セナ・プログラムの責任者、ナリア・チャンバルさんです。クリニックの閉鎖により「望まない妊娠、早婚と児童婚、HIVその他の性感染症の感染の増加が起こる」と予想します。若いうちから学校に通えなくなる少女たちが増え、安全でない中絶も増える恐れがあります。 AMODEFAはモザンビーク保健省と緊密に連携し、AMODEFAが提供する家族計画、HIV、結核、マラリアの各プログラムが、政府の保健サービスをそれぞれ補完し、支援するよう調整しています。「AMODEFAの活動がストップしたら、政府の医療機関に大きな負担となります」とシミオーネ事務局長。「全国的に困難な状況になるでしょう」。 影響が甚大なのは最も貧しく、脆弱なコミュニティに住む人々です。モザンビークで最も大きく、貧困率も高いナンプラ省の農村地帯の住民を対象にしたAMODEFAの「チャレンジTB」プログラムが存続の危機にあります。1年ほど続いた同プログラムでは、一番近いクリニックが自宅の80キロ先にあるような結核患者の所までスタッフが足を延ばし、診断と治療をしてきました。 ボランティアとスタッフが自転車とバイクで駆け回り、遠隔地のコミュニティで結核の啓発と検査を続けることで感染の実態が見えてきました。AMODEFAが活動する8つの地区で結核の検査を実施したところ、2017年1-3月で1,318人、4-6月で2,106人、7-9月で3,154人まで受診者が増えました。検査を受けた人の半数以上は結核と診断されています。 「これだけでも大きな成果ですが、まだやることが山積しています」と話すのはプロジェクトのモニタリングと評価の責任者、マリア・テレーサ・ド・ファティマさんです。新規の結核感染者は今後2年間は増え、そこから減少していくとファティマさんは考えます。 特にリスクが高いのは、現在、抗結核薬を服用している2,000人ほどの患者です。抗結核薬は、6カ月間、毎日薬を飲み続けなければなりません。身近に薬を出してくれるクリニックがなくなってしまい、服用を中断すると体内で薬の効かない耐性菌ができる可能性があります。耐性菌の根治はさらに難しくなります。新規の患者が5人、治療を始めたばかりのナハとモルプラ地区で働くボランティアのマリオ・ヴィランクさんが言います。「(利用者たちは)AMODEFAに強い信頼があります。10人が治るのを見たので、今は深く信用されています」。 このような信頼関係が最初から築けていたわけではありません。マチャイエイエさんがマプトで HIV家庭訪問プログラムを始めた当初は、車を目立たないように停め、AMODEFAの人間だとわからないように利用者のコミュニティに行かなければなりませんでした。「人々はHIVを恐れていましたから、私の訪問も恐れられたのです」。 モザンビークの人々の態度が変わり、タブーが破られるまでには19年もかかりました。人々がやっと恐れの代わりに希望を抱き始めた矢先に、AMODEFAの活動と人々の命がグローバル・ギャグ・ルールの影に脅かされようとしています。 AMODEFAのたゆみない活動について知りたい方はこちら

IPPFタイでボランティア活動をするジヘ・ホンさん

「クリニックまで来られないセックスワーカーを訪ねます」タイのHIVと性感染症予防活動

一般的に、セックスワーカーはHIV(エイズウイルス)と性感染症(STI)感染リスクが高い環境で仕事をします。セックスワークが違法なタイでも、ほかの多くの国と同様、セックスワークが黙認されています。 ジヘ・ホンさんはIPPFタイ(PPAT)のボランティアです。ジヘさんは「HIVと性感染症予防チーム」の一員として、首都バンコクとその周辺で活動しています。ボランティア活動を始めて1カ月で、ジヘさんは感染リスクが高い風俗産業で働く女性たちを17回、訪問しました。 「(風俗で働く女性たちは)ターゲットグループの一つと言っていいと思います」とジヘさん。「女性たちの中には、タイ語も話せず、タイ政府が認める身分証を持っていない人もいます。若い女性ばかりです」 HIVと性感染症予防チームは、バンコクにあるPPATのセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス部門に属しています。このチームは、中高生やMSM (男性と性行為をする男性)のグループ、風俗業の経営者など、市内の様々な組織と協力関係を築き、アウトリーチ活動を通じて直接、働く人たちの話を聞きに行きます。 「セックスワーカーの人たちはクリニックで検査を受ける時間がないかもしれません。だから私たちが仕事場まで訪ねます」とジヘさんは言います。「通常、1時間ほどの教育的な話合いの場を持ち、復習を兼ねた活動をします。みんなで楽しみながら学ぶ時間です」 ジヘさんのいるチームは、イラストや画像で説明がある、大型の展示教材を持っていきます。そこには様々なSTIの症状や兆候が細かく図解され、HIV/AIDSとSTIの症状の克明な写真もあります。STIに感染するとどうなるのか、誰にでもわかりやすく説明されています。 「梅毒」「淋病」「性器ヘルペス」「腟カンジダ症」などの説明書きや写真を見た参加者からは、大きな反応があります。「みんなショックを受けますが、若い人は特にそうです。参加者はたくさん質問しますし、心配していることを話してくれます」とジヘさんは振り返ります。 PPATの冊子や小冊子の内容は、ショックを与えるようなものだけではありません。セクシュアリティと性的指向などの概念についても解説し、PPATが行うセミナーで話される性の多様性と平等についての理解を深める助けになります。 セミナーの後でHIVと梅毒の即日検査が希望者に実施されます。タイ国籍があれば、政府の補助によって年に2回まではHIV検査は無料です。有料でも、HIV検査は1回140バーツか4米ドル(500円弱)、梅毒検査は50バーツ(約170円)で受けられます。 「HIVの即日検査は30分ほどで結果が出て、99%正確です」とジヘさん。「即日検査と同時に看護師が採血します。このサンプルをラボに送ってより精度の高い検査をします。これは2~3日かかります」 検査の際、コンドームの正しい装着法をペニスの模型を使ったデモンストレーションで教えます。帰り道、受講者はPPATからのお土産の入った袋をもらいます。中にはコンドーム、PPATクリニックの電話番号が書かれた名刺、コンドームを入れるポーチが入っています。 ジヘさんは韓国の出身ですが、米国南部ルイジアナ州ニューオーリンズにあるテュレーン大学の大学院で公衆衛生学を学んでいます。進学後、PPATでボランティア活動を始めました。 「(活動を通して)世界中の人々は平等であることを実感しました。年齢、性別、性的指向、国籍、宗教や職業に関わらず、必要とする人は誰でも保健医療サービスを受けられるようにすることが重要です」  

A young female client helped by a project via IPPF

グローバル・ギャグ・ルールの適用拡大が及ぼす世代を超えた悪影響

米国による グローバル・ギャグ・ルール(GGR)の適用範囲の拡大( https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2017/05/270866.htm)により、世界でもっとも貧困に苦しむ女性と少女たちの何百万という命が脅かされると、テウォドロス・メレッセIPPF事務局長は訴えています。 グローバル・ギャグ・ルール(GGR、メキシコシティ政策とも言われている)の適用範囲が拡大されれば、地球上で貧困に苦しむ多くの女性たちが、命にかかわる医療ケアを受けることができなくなります。それにより、意図しない妊娠、安全でない中絶が増え、何千人もの女性が命を落とすことになるでしょう。 このままでは、適正な価格で受けられた、質の高い、包括的なリプロダクティブ・ヘルスケアが、世界中で提供できなくなります。提供できなくなるサービスは、避妊指導や避妊法、ジカウイルス感染症に関する保健情報、母子保健サービス、出産後の母子のケア、生殖器のがん治療、HIV感染の予防や治療など、多岐にわたります。 GGRの影響をもっとも受ける、周辺化された社会に暮らす女性たちは、もっとも貧困で、医療サービスを受けにくい僻地に住む、25歳未満の女性たちです。人々が必要とする保健医療サービスが提供できなくなるために、何百万という人々が取り残され、意図しない妊娠や疾病、SRHに関連する死に追いやられるでしょう。 テウォドロス・メレッセIPPF事務局長のコメントです。 「グローバル・ギャグ・ルールの適用範囲は前代未聞の規模で拡大されます。社会の片隅に追いやられ、医療サービスへのアクセスが非常に限られる人々、貧しい女性やコミュニティが取り残される状況を作ることは、考えられる限りで最悪の事態です」 「GGRに基づいて米国が行動すれば、IPPFが加盟協会(MA)を通じて各国で提供し、女性たちが本当に必要とするサポート、カウンセリング、家族計画サービスなど、その国ではまったく合法な活動が不可能になります。IPPFの活動はやめるわけにはいきません。一度、活動を止めてしまえば多くの命が失われ、その影響は何世代にもわたって続くでしょう」 「女性であればだれでも、妊娠や出産など、自分の身体に起こることを、安全で合法に決めることができるべきだとIPPFは強く信じています。今回の要求は、強いられた妊娠の増加や、場合によってはもっとひどい結末などを招くだけであり、IPPFはこれを受け入れることはできません」   IPPFの試算では、GGRの実施によってIPPFへの資金援助が停止されることによって、妊産婦死亡が2万人、意図しない妊娠が480万件、安全でない中絶が170万件、世界中でさらに増加することになります。   GGRの適用範囲が拡大されると、IPPFが途上国で作り上げてきた保健医療分野のパートナーシップが壊される可能性があります。MAが現地の医療機関等と緊密に連携し、築いてきたリファラル(照会)や患者に対するサポートなどのサービスができなくなるからです。保健医療を提供する側と受ける側が持っていた選択肢が狭まり、双方にとって不利益が生じることになります。 米国国際開発庁(USAID)は、何十年も家族計画と公衆衛生プログラムを強く支持し、援助してきました。例え限られた期間だったとしても、USAIDがGGRの実施に従うことで、USAIDがもっとも得意としてきた活動の中で、多くの命を救うことができなくなります。莫大な活動予算が無になり、USAIDにとっても大きな損失になることでしょう。 今回の政策決定により、IPPFはその活動の中核を担う資金のうち、1億ドルを失います。MAを代表し、IPPFは1月に「IPPFがグローバル・ギャグ・ルールに署名しない理由」という緊急声明も発表しました。そちらもご参照ください。

フィジーでIPPFとUNFPAがサイクロン被害に遭った住民たちを支援する様子

IPPF事務局長の声明:米国政府のUNFPAへの資金援助停止に対するIPPFの見解

米国政府による国連人口基金(UNFPA)向け拠出金の停止に関する発表を受け、「(この決定は)世界中の女性や少女たちにとって絶望的な結果をもたらすだろう」と、国際家族計画連盟(IPPF)事務局長であるテウォドロス・メレッセは述べました。 メレッセ事務局長の発言は以下の通りです。 「米国政府が援助打ち切ろうとしている資金は、世界でもっとも貧困で、もっとも脆弱な立場にある女性や少女たちのヘルスケアのために使われるはずでした」 「それは避妊、妊産婦ケア、安全な出産をサポートするためだけではなく、ジェンダーに基づく暴力を防ぐためのプログラムにも使われるはずの資金でした」 「IPPFはUNFPAと緊密に連携して、世界中でこうしたケアを提供するのがもっとも困難な状況の中で活動してきました。特に、世界でもっとも貧困な国における、もっとも貧しい地域で活動をしてきました。このような環境に生きる女性や少女たちは特に脆弱な状況にあるため、この資金の打ち切りは、彼女たちに悲惨な 結果をもたらすでしょう」 メレッセ事務局長はさらに、「新しく発足した米国政権による、世界中の女性や少女たちのヘルスケアに対する、今年2回目の打撃です」と加えました。 「グローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)の再導入により、既にIPPFや他の保健医療機関向けの米国の資金援助が打ち切りとなり、避妊サービス、HIVプログラム、ジカ熱の集団感染対策などの活動ができなくなってしまいました」 「(今回の政策によって)IPPFが失う見込みの1億米ドルの資金があれば、2万件の妊産婦死亡を防止できるはずです。また、この資金カットにより480万件の意図しない妊娠、170万件の安全でない中絶が起きる可能性があります」 「一つ、明確にしたいことがあります。米国政府によって打ち切られつつある拠出金は、いずれも中絶の実施や、強制的な生殖に関する政策の助長に費やされるものではありません。これは、(リプロダクティブ・ヘルスにかこつけた理由付けは)資金カットのための隠れみのでしかありません」 「権利に基づいて行動する組織として、IPPFはUNPFAをはじめとする保健医療機関や人権団体と協力し、何千万という女性と少女たちに対し、避妊法をいつ、どのように使うかを選ぶ権利を守り、命に関わるヘルスサービスへのアクセスを保障します」 「UNFPAは各国政府に働きかけ、持続可能な開発目標(SDGs)など、世界共通で合意した政策において協力するように求めています。グローバルな目標の達成は、すべての人々のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスを守るためにも絶対に必要なことです」 「米国で政権が発足してから3カ月のうちに、重要な保健サービスを、もっとも必要としている人々に届けるための努力が2度も否定されたこときわめて遺憾に思います。この政治的決断によって、何万人もの命が失われることでしょう」