セミナー報告:母子保健分野における官民連携の最前線

セミナー報告:母子保健分野における官民連携の最前線

母子保健分野における官民連携の最前線
―ガーナにおけるパイロットプロジェクトの事例より―

Frontier Of Public Private And CSO Partnership Initiatives For Improving Maternal Health --- A Case Study Of A Pilot Project In Ghana

2014年11月2日、第55回日本熱帯医学会大会/第29回日本国際保健医療学会学術大会において、ジョイセフ主催でランチョンセミナーを行いました。ルシアン・クアクウIPPFアフリカ地域事務局長を迎え、パナソニック株式会社渉外本部国際渉外グループの島田玄一郎渉外本部国際渉外グループマネージャー 、サラヤ株式会社BOPビジネス開発ユニット ウガンダ・プロジェクトの北條健生プロジェクト・リーダーに発表していただきました。司会はジョイセフの西田良子シニア・アドバイザーが務め、ジョイセフ宮原契子企画マーケティンググループ課長も発表しました。

初めに、ジョイセフ宮原課長が官民連携(PPP)について述べました。単に企業の社会的責任(CSR)の一環として資金を提供するという以前の連携の形から、企業・政府・市民社会(CSO)がそれぞれの力を持ち寄り、互いの利益を追求しつつも、支援を受ける人の生活を向上させる、いわゆる「Win-Win」の取り組みに変わってきたことを説明しました。

次に、クアクウIPPFアフリカ地域事務局長が、IPPFの活動概要や日本とのつながり、特にODAやIPPF日本HIV・リプロダクティブ・ヘルス信託基金(JTF)助成プロジェクトによる成果について、自身がコートジボワールでJTFプロジェクトマネージャーを務めた経験を含め、紹介しました。また、今後、外務省、パナソニック株式会社及びサラヤ株式会社との官民連携事業を通じて、コミュニティに期待される効果―ソーラーランタンを用いた女児の学習効果、出産時のソーラーランタン活用による安全性の向上、アルコール消毒液を用いた感染症対策や啓発活動の実施等―についても触れ、次回の第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)へ向けて、現行のPPP活動の分析が必要だと発言しました。

これを受け、パナソニック株式会社の島田グループマネージャーより、無電化地域に灯りを届ける「ソーラーランタン10万台プロジェクト」が紹介されました。それまで不便で危険も多かった夜間に、環境にも経済的にもやさしいソーラーランタンを使うことで、生活や教育、医療、コミュニティの交流の機会が増えることがわかりました。プロジェクトをビジネスに転換する際の販路の確保など、今後の課題も示されました。

さらに、サラヤ株式会社の北條プロジェクト・リーダーより、JICAのBOPビジネス連携促進協力準備調査事業(2013年末まで)としても実施された、アルコール手指消毒剤の現地生産を含めた「病院で手の消毒100%プロジェクト」が紹介されました。医療機関ですら十分な消毒を行う環境が乏しい中で、WHOのガイドラインに従って繰り返し指導を行うことで、術後の感染症などが劇的に減っていくことがわかりました。

会場からは、ソーラーランタンの耐久性、プロジェクトを必要とするコミュニティとのマッチング、またPPPによるWin-Winの関係は本当に築けるのか、といった質問が出され、パネリストと参加者で共に考えました。

島田グループマネージャーより、ソーラーランタンの品質には自信があり故障はしにくく、切れたバッテリーの交換方法が課題になるものの、ケロシンランプを使った場合の費用を計算して比較した場合、1台50ドルほどのソーラーランタンを約1年使用することで初期コストが回収でき、ランニングコストも節約できると回答いただきました。

最後に司会より、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行に際しサラヤ株式会社がどのような活動を行っているか質問があり、北條プロジェクト・リーダーより、アルコール手指消毒剤をナイジェリアに送ることができたものの、リベリア、シエラレオネなどその他の国については、配送が困難な状況に直面しているとの報告を受けました。

今回のセミナーでは、IPPFの展望や実際のプロジェクトの様子を聞くことで、今後の官民連携の可能性と課題について考えました。NGOを通じ、支援を必要とするコミュニティへのアクセスを得て、そのニーズを正確に把握し、政府のバックアップを受けて民間企業が主体的にプロジェクトを運営していくという、新しい支援の形の実現性を実感するセミナーになりました。