- - -
What does feminist foreign policy mean for sexual and reproductive health and rights?

Blog post JP

フェミニスト外交政策はセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)にとってどのような意味があるのか

平等と交差性(インターセクショナリティ*)に基づくフェミニスト開発・外交政策は、女性だけではなく、社会のすべての人々の為のものです。

フェミニスト開発・外交政策は、権力のある男性の関心や課題が大半だった既存のプロセスに、女性の視点を加えていくということ以上に、フェミニスト開発の礎であるSRHRを推し進めるための重要な原動力です。

フェミニスト外交政策は、男性の関心や課題を中心とした既存のプロセスに、女性の視点を加えると同時に、フェミニスト開発の礎であるSRHRを推進するもので、 ドイツ、フランス、カナダ等のG7政府を含む世界の8ヵ国**が掲げています。しかし、この政策の実施にあたっては、反対や敵対心を持たれることもあります。

では、政策の進展を阻んだり、弱体化しようとする反対勢力や反権利、反ジェンダー運動と対抗するにはどうしたらいいのでしょう。

これは、6月12日にベルリンで開かれたフェミニスト開発・外交政策についてのハイレベル委員会(以下「パネル」)で上がった主要な問題の一つでした。本パネルは、IPPFとドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の共催で開催され、フェミニスト開発・外交政策に合意し、実施するにあたっての最大の問題や機会について、またそれがどのようにSRHRに関連するかについて議論が交わされました。

パネルのモデレータを務めたミナ・バーリング IPPF渉外部部長は、「フェミニスト外交は、交差的であるように立案され、すべての人々に適用できるメカニズムとなっています。また、援助、貿易、防衛、外交に関連した活動範囲にも影響を与え、波及効果もあります」と述べています。

 

フェミニスト外交政策の「3R」

2023年3月、ドイツ政府は、ジェンダー不平等に戦略的に取り組み、女性の権利促進を試みる新たなフェミニスト開発政策を発表しました。世界第2位の開発援助国として、この政策はドイツにとって重要かつ歴史的な一歩であり、カナダ、フランス、ルクセンブルグ、メキシコ、オランダ、そしてスペインに続くものです。

BMZのベアベル・コフラー政務次官は、発言の中でフェミニスト外交政策の「3R」、Rights: 権利、Resources: リソース、Representation: 代表制の重要性について強調しました。その中で、新しい政策が成功したかどうかは、女性と周縁化されたグループの権利が認められたか、リソースへのアクセスが改善されたか、平等な参加の指標として女性たちの代表制が強化されたかどうかだとし、さらに、

「ジェンダーに配慮しているかどうかではなく、ジェンダートランスフォーマティブ(革新的なジェンダー意識)であるかということであり、セクター全体で取り組む必要があります」と述べました。

オランダ政府のSRHRユース大使、ジム・モンケル氏は、4つ目のR: リアリティ・チェックをあげました。モンケル氏は、ローカル・コンテキスト(現地の文脈)で政策が実施され、設計から実施まで全段階に若者を参加させる必要性を強調しました。

「世界人口の50%は、30歳未満です。若者と対等なパートナーシップを目指す必要があります。若者は、実施された政策からどのような恩恵を受けられるのかを知る必要があります」

 

世界からの教訓

これまでの教訓や、既存のフェミニスト外交政策のベストプラクティスの共有は、パネル・ディスカッションの主要テーマでした。

カナダ政府国際開発省のアニタ・ヴァンデンベルド大臣政務官は、2017年に策定されたカナダのフェミニスト国際援助政策(FIAP)についての見解を共有しました。

「ジェンダー平等を優先するには、明確かつ野心的なターゲットを設定する必要があり、ジェンダーの専門家に投資する必要があります。FIAPは、女性が支援を受けるためだけのものだという誤解がありますが、実際は、女性が設計から実施まですべての段階に関与しています」

メキシコでは、2020年以来、フェミニスト外交政策が実施されています。しかし、根本的なところで、「フェミニスト」という言葉を使うだけでも難しさがあると、メキシコ外務省のクリストファー・バリナス・バルデス人権・民主主義局長は言います。

「古いタイプの大臣がたくさんいるので、「フェミニスト」というだけで、彼らは「違う言い方をしてもいいか? ジェンダーの観点で、とかジェンダー志向とか」といってきますが、そこは「だめです。ちゃんとフェミニストといってください」と、いっています。フェミニスト外交政策は、使いこなせればとてもパワフルなツールです。「どちらかというとあった方がいい」というようなものではなく、これは原則であり、人権に関わることなのです」

IPPFのマリー=イヴリン・ペトリュス=バリーアフリカ地域事務局長も、人権への焦点を強調しました。

「どこに住もうと、どこから来ようと、私たちには共通項があり、それは人権です。何をするにもまず人権を念頭におけば、おのずと人々の現実を考慮できるのです」

 

フェミニスト外交政策の脱植民地化

フェミニスト政策へのアプローチを実施するにあたって、設計や実施の課題以上に極めて重要なのは、脱植民地化を考慮することだと、バリー事務局長は述べています。

「フェミニスト開発と外交政策の策定に誰が関わっているのだろうと考えたとき、その対話には、脱植民地化の声や私たちが人権を守ろうとしている人たちの声は含まれていないと気づきました。大半の声は、グローバル・ノースからのものであり、かつて植民地化した人たちに、早く脱植民地化しろと、急きたてているかのようです」

脱植民地化や反人種主義の問題に取り組む際は、世界中の政府、市民社会組織、草の根活動家たちの協働が重要です。

オーストラリア政府のジェンダー平等主席専門官であるサラ・グールディング次官補は、「これは、全世界共通の優先事項に関する問題を解決するための、全員が参加している旅であり、それは人権、安全保障、繁栄、そして安定の達成を支えてくれるものなのです」と述べています。

IPPFは将来への展望として、各国政府には、構造、プロセス、資金、パートナーシップの中心にジェンダー平等を位置づけるフェミニスト外交政策を、大胆かつ果敢に採用することを奨励します。

IPPFは、このような重要な議論の場を提供できたことを誇りに思います。

女性、女児を含む社会を構成するすべての人々が、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスについて自由に選択できる安全な世界を目指して、私たちのパートナーシップと連帯を惜しみません。

12

キャプション

左から:サラ・グールディング、クリストファー・バリナス・バルデス、ベアベル・コフラー、ミナ・バーリング

 

パネリスト:

ミナ・バーリング IPPF渉外部部長(モデレータ)

ベアベル・コフラー ドイツ連邦経済協力開発大臣政務官

アニタ・ヴァンデンベルド カナダ政府国際開発大臣政務官

クリストファー・バリナス・バルデス メキシコ政府外務省人権・民主主義局長

サラ・グールディング オーストラリア政府外務貿易省次官補兼ジェンダー平等首席専門官

ジム・モンケル オランダSRHRユース大使

マリー=イヴリン・ペトリュス=バリー IPPFアフリカ地域事務局長

 

*交差性の概念は、ジェンダー、人種、民族、性的指向、性自認、障害と能力主義、階級や他の形態の差別に基づく不平等 に根ざしたシステムが交差的に作用することによって現れる状態や効果を表現する。複数の不平等の形態がお互いを強化 するため、ある不平等の形態が別の形態の不平等を強化することがないよう、それらの不平等を同時に分析し対応する必要がある。( W7ジャパン2023 コミュニケ和訳から。 http://women7.org/wp-content/uploads/2023/04/W7-Communique_Japanese.pdf

 

**フェミニスト外交政策を掲げる国々(2023年8月22日現在)
ドイツ、スペイン、フランス、オランダ、ルクセンブルグ、カナダ、メキシコ、チリ

when