2025年4月8日ー IPPFがグローバル・パートナー団体に対して実施した新調査の結果、トランプ政権の海外支援削減の影響は広範囲に及び、世界で多くの人々のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケア(SRH)が危機に追い込まれることが明らかになりました。
調査結果の概要は以下の通りです。
- 72の加盟協会(MA)と協力パートナー(CP) (62%)が削減対象の団体から資金提供を受けている。IPPFからコア資金を受け取っている団体のうち半数以上(57%)が資金削減に直面している。IPPFのパートナーの過半数が混乱に陥り、世界的にSRHサービスへのアクセスに影響が及んでいる。
- 156の重要な保健・医療関連プロジェクトがすでに中止されたか、その危機に瀕している。
- 最低でも8,520万ドルの資金が直接影響を受けるか、すでに削減された。
- 影響を受けた団体全体で1,737人のスタッフが職を失う可能性があるか、すでに解雇された。
- 常設診療所やモバイル・クリニックを含む3,961カ所のサービス提供拠点が閉鎖の危機にあるか、すでに閉鎖された。
- 850万人が命に関わるSRHサービスへのアクセスを失う可能性がある。
これらの資金削減は、IPPFがサービスを提供するコミュニティの人々の生活に深刻な結果を招くと予想されます。危機にある資金が実際にすべて打ち切られた場合、3,844人の妊産婦の死亡、300万人以上の意図しない妊娠、75万6,010件の安全でない人工妊娠中絶につながるとIPPFは予測しています。これらの影響は、各国の保健・医療制度にも大きな財政負担を強いることになります。
トランプ政権による措置の影響は、避妊具(薬)、妊産婦ケア、HIV予防サービスの提供のために国際的な資金に頼るMAが多いアフリカおよび南アジアの国々でとりわけ深刻です。
マラウイでは、IPPFマラウイ(FPAM)の2025年予算がアメリカの支援中止によっておよそ半減し、SRHサービスの27%が危険にさらされ、17万2,000人以上のサービス利用者がアクセスを失うと予測されます。スタッフの27%、211のクリニックが運営の危機にあり、コミュニティにおける信頼が脅かされています。ドナルド・マクワクワ(Donald Makwakwa)FPAM事務局長は、「女性と女児は、極めて重要で一刻を争うSRHRサービスから切り離され、意図しない妊娠やHIV感染のリスクがより高まっています。人々の健康だけでなく、これまでIPPFがコミュニティで築いてきた信頼も脅かされています」
トーゴでは、IPPFトーゴ(ATBEF)の資金削減は年間予算の50%以上、約820万ドルと推計されています。米国国際開発局(USAID)と国連人口基金(UNFPA)の支援を受けていた2つの大きなプロジェクトに影響があり、23万1,000人以上のサービス利用者がSRHサービスへのアクセスを失います。さらにIPPFトーゴは、トーゴ保健省との計画の公約を果たすことが不可能となり、国の保健計画も混乱しています。
アフガニスタンでは、USAIDおよびUNFPAの支援によってIPPFアフガニスタン(AFGA)が実施している重要なプロジェクトが中断の危機にあり、38%のSRHサービスが脅かされ、250人のスタッフが職を失っています。18のファミリー・ヘルス・ハウス(FHH)と15のモバイル・クリニックが閉鎖されたことで、特に他に選択肢のない農村部や紛争の影響を受けた地域に住む女性たちの妊産婦ケアやリプロダクティブ・ヘルスケアへのアクセスが脅かされています。
米国では、IPPFアメリカ(Planned Parenthood)のヘルスセンターを利用する低所得者のための価格を抑えた避妊具(薬)やリプロダクティブ・ヘルスケアのための資金をトランプ政権が打ち切る意向が、本調査とは別の第三者機関による報告で明らかになっています。
IPPFでは、このような喫緊の事態に対処するために、「被害低減タスクフォース(Harm Mitigation Task Force」を立ち上げました。変化する状況を見極め、最も影響を受けたMA・CP団体に緊急支援資金を提供します。第一回目の支援金は、重要なSRHサービスや命を救う医療物資へのアクセスが遮断されないよう、2025年4月に支給されます。
「政治判断で医療・保健ケアにアクセスできる人とできない人を決定するようなことはあってはなりません。IPPFでは、今後さらに対応を強化していきます。私たちは不屈の連盟組織であり、さまざまな困難を乗り越えてきた長い歴史があります。いまは被害を軽減し、新たなリソースを動員し、IPPFのケアを必要としている人々を取り残さないことに焦点を当てていきます」と、アルバロ・ベルメホIPPF事務局長は述べています。
お問い合わせ先:谷口百合([email protected])
資金削減の影響を最も受けたIPPFのMAやCPへの緊急支援についてはこちらから。
備考
- 2025年2月にIPPFは傘下のMAやCPから今回のトランプ政権の政策の影響に関する調査を実施。米国の資金を直接受けている事業、および間接的に影響を受ける事業について、さらにスタッフ、サービス提供拠点、サービス利用者、SRH関連物資にどのような影響があるかについても質問項目を設けた。
- 調査の結果、IPPFの158のMA・CPのうち117団体から回答を得た。
- 状況が刻一刻と変わることから、2025年半ばにフォローアップ調査を実施して、その後の影響も把握する。
- 調査の結果、MAやCPが現状で影響を受けている資金額は少なくとも4,880万ドルだった。これには、影響を受けている資金源全体のうち、すでに失われた資金とリスクのある資金が含まれる。さらに、実現の見込みが失われた2,090万ドル相当の44の保留案件がある。また、契約済事業のうちIPPF事務局の損失は1,550万ドルの見通しであることから、これらを合算すると、IPPFが影響を受ける資金の推定総額は、8,520万ドルとなる。
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