アフリカ
2024年4月2日、米ワシントン・ポスト紙が「アフリカの大半の国では中絶は合法だが、そのことを知っている女性はほとんどいなく、積極的な宣伝もされていない」と報じました。
実際、2003年にアフリカ連合の55カ国は中絶の権利を支持する「マプト議定書」に署名し、議定書には以下の条文があります。「締約国は、性的暴行、強姦、近親相姦による妊娠、および妊娠の継続が母体の精神的、身体的健康に危険を及ぼす場合、または母体、胎児の生命を危険にさらす場合、医療による中絶を許可することにより女性の生殖に関する権利を保護し、あらゆる適切な措置をとるものとする。(第14条2.c)」
過去20年間で、アフリカの20カ国以上が、安全で合法な中絶へのアクセスを拡大しました。ベナンでも、2021年10月、「(妊娠が)女性または胎児の利益とは相容れない物質的、教育的、職業的、精神的苦痛をもたらす、または引き起こす可能性がある場合」の中絶が合法化されました。
しかし、IPPFベナンAssociation Béninoise pour la Promotion de la Famille(ABPF)のプログラム・ディレクターであるセルジュ・キティフン(Serge Kitihoun)は、「多くの人々は合法化について知りません。法律はフランス語で書かれており、フランス語が話せない人もいるので、現地の言葉に訳す必要があります。知らない人の多くは、安全でない中絶に頼るでしょう」と述べており、これは他の多くのアフリカ諸国にも当てはまる問題です。
安全な中絶を確実にするには、情報へのアクセスが極めて重要であるため、法律を公用語(植民地時代の言語)から現地語に訳すことは必須です。さらに、SNSは情報を広める上で重要な役割を果たします。米MSI社とデジタル・ヘイト対策センター(Center for Countering Digital Hate)は、2024年3月27日に発表した報告書「デジタル格差: ソーシャルメディアにおける生殖の権利をめぐる世界的な戦い(Digital Disparities: The Global Battle for Reproductive Rights on Social Media)」の中で、以下のように警鐘を鳴らしています。
「MetaとGoogle社は、地域の中絶医療提供者の広告を制限し、リプロダクティブ・ヘルスケアへのアクセスを困難にする誤情報の拡散防止に取り組んでいません。またMeta社は、米国を拠点とする活動家が実施した、海外に渡航して中絶を行うことの阻止を目的とした反中絶広告掲載による利益を享受しています」
大規模な偽情報は、女性の安全な中絶医療を受ける権利に悪影響を与えています。GoogleとMeta社は、責任を取り、何らかの対応をとる必要があります。
アフリカのプロライフ・反権利団体は、中絶医療を提供する医療従事者を威嚇し続けているため、医師や助産師は中絶ケアサービスを積極的に宣伝することを控えるようになりました。IPPFアフリカ地域事務局コミュニケーション担当のマラー・タボットは、「アフリカのサブサハラ諸国では、反権利的な政府、市民社会組織、反対グループが、マプト議定書のような女性と女児に広範な権利を保障する条約や法制度等に、強い異議を唱えはじめています。最近ウガンダ政府が制定した「反同性愛法」は、状況の後退の顕著な例です。避妊、中絶、包括的性教育、ジェンダー、セクシュアリティ、そして国家の役割をめぐる議論は、ますます対立を深めています。これらの課題には、協力、革新、そして揺るぎない活動の継続が重要です。私たちが連帯することで、包括的な中絶ケアへのアクセスを守り、拡大し、性と生殖に関する権利を擁護し、アフリカ、米国、そして世界のすべての人々にとってリプロダクティブ・ジャスティスが現実となる未来への道を開くことができるのです」と述べています。
写真: IPPF/Xaume Olleros/ベニン