紛争地で性暴力が続く限りサバイバーへのケアは終わらない

紛争地で性暴力が続く限りサバイバーへのケアも続けなければなりません

人道支援活動の中で、なぜ、紛争と脆弱な人々に対応する場面でセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(SRH)ケアへの配慮が必要なのか、質問されることがしばしばあります。

その答えはわかりきっています。人道危機下で真っ先に被害を受けるのは女性と少女たちです。平時の家族単位や家庭による保護がなくなるため、女性と少女たちはより性暴力を受けやすい状態になります。武力紛争では兵士よりも女性のリスクが高いことがあります。

人身取引とレイプの危険性が高まる

推定で毎年、世界中の紛争地で何万人という女性と少女が性的暴行を受けていると考えられます。危機下では、少女たちは平時よりも低年齢で結婚させられ、女性と少女が人身取引とレイプの被害に遭うリスクが増加します。戦闘時の戦術としてレイプが実行されることが非常に多いからです。


また、人道危機をきっかけに保健システムが崩壊することも少なくありません。その場合、SRHケアとサービスを受けにくくなり、レイプのサバイバー(被害をくぐり抜けてきた者)は、生き残るか、命を落としてしまうかの瀬戸際に立たされます。
 

SRHは、レイプのサバイバーがもっとも必要とする医療ケアのカギとなります。性感染症とHIV感染の診断と治療、サバイバーに必要な医療ケアの医療施設による管理、安全な中絶ケア、そして、女性が安全でない中絶を受けるしかなかった場合には、中絶後のケアなどが必要になります。

しかし、紛争下におけるセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケアは見過ごされがちで、資金や必要な薬品、機材が途絶えがちです。この状況を変えるため、国際社会、地域社会、自治体レベルで方向性を統一し、支援をしなければなりません。

性とジェンダーに基づく暴力をなくす

2009年に認められた国連安全保障理事会の決議1889号で、リプロダクティブ・ヘルスへの女性と少女のアクセスを確保することが明記され、リプロダクティブ・ヘルスの必要性が確認されました。これをきっかけに多くの国々で政府が性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)をなくすためにコミットメントを行い、紛争下における性暴力のサバイバーにタイムリーな支援をしていくことを約束しました。

国際開発でも、人道危機支援においても、ジェンダーに基づく暴力とセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス分野の縦割り主義をやめ、すべての危機が発生したその日から、サバイバーに包括的で質の高いサービスを、組織的に、個々のニーズに対応する形で提供しなければなりません。女性と少女は自分たちのリプロダクティブ・ヘルスに関する決断が自由にでき、強制されない状態で必要なサービスを得られなければなりません。

国際家族計画連盟(IPPF)は、何十年にもわたって人道危機下で活動しています。160以上の加盟協会(MA)とパートナー団体を通じて、命に関わるセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(SRH)ケアを提供しています。SRHケアを窓口として、レイプ被害者の支援につながることが少なくありません。IPPFは、この窓口としての活動を重視し、注力しています。レイプをくぐり抜けた女性が、その回復の助けとなるSRHケアを拒否されるという不当な仕打ちを受けてはならないからです。

グローバル社会の公約 

2019年5月、ノルウェーのオスロで開かれた国際会議で、危機下における性とジェンダーに基づく暴力への支援を行うための援助の拠出を各国が話し合いました。この会議を受け、各国は拠出金のコミットメントをするだけにとどまらず、人道支援に関係する主要なステークホルダー(政府、支援団体など)がこれまで想定してきたSRHケアの位置づけを根本的に変えなければ、支援は本物になりません。セクシュアル・ライツと自分の身体に関して決定する権利は、すべての人がもつ基本的人権であり、人道支援に携わる関係者は、危機下においてその権利を擁護する義務があります。

オスロの会議は、危機下でレイプのサバイバーたちのために国際社会が団結し、性と生殖に関する安全と尊厳を守ることを世界に示すまたとない機会になりました。

 

(初出:Thomson Reuters Foundation news 、2019年5月23日)