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世界保健デー:全ての人にとって公平で健康な世界を作るために

世界保健デーに、COVID-19が健康格差に苦しむコミュニティに与えた深刻な影響を振り返ります。また、ワクチン分配に注目して、より公平な、より健康な世界を実現する方法がないか、考察しました。

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シニア・アドボカシーアドバイザー、Dr. ファビアン・カタルドー

もっとも脆弱で弱い立場にある人々が、健康格差の影響を受け続けています。特に非白人のコミュニティ、周縁化されたグループなどは、医療体制の不備と相まって他の人々と同様な質の高い医療を受けられません。健康格差があるために、ジェンダーと人種の平等、貧困の削減、雇用の確保、経済成長、健康的な生活を送る権利が実現できません。

社会的・経済的な不利益を被るのは、非白人のコミュニティに加え、難民・移民、障がい者、LGBTI+コミュニティの人々など、圧倒的に社会的弱者や周縁化された人々です。結果、これらの人々の健康状態は、必然的にそれ以外のグループの人々より悪くなります。

 

コロナ禍における健康格差の拡大

歴史を見ても、人々はパンデミックの影響を平等に受けてきませんでした。もっとも恵まれないコミュニティでは感染率と死亡率が上がります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下においても不平等な状況が繰り返されていることが分かっています[1]。

人種によってパンデミックの負担が大きく異なることから、人種間の著しい不公平が明らかになりました[2]。長期、短期的に見たCOVID-19による社会・経済の悪化がもたらす負担の多くを女性が受けています。 女性はエッセンシャルワーカーとしてパンデミックの最前線で働いているにも関わらず、元々あったジェンダー格差がコロナ禍によって拡大し、男女間の負担がますます不均衡になっています[3]。第65回国連女性の地位委員会(CSW65)で合意された結論には、コロナ禍によって「既存の格差が拡がり、複数の交差する形態の差別、人種差別、スティグマ(社会的汚名)、外国人差別などの永続を助長している」と明記されました。

過去20年以上、上昇していなかった世界の貧困率が、COVID-19の影響で上がりました。世界銀行は、2021年までにさらに1億5,000万人が極貧層に陥ったと推定しています。これもパンデミックによる混乱が紛争や気候変動の影響を拡大させるためです。

幅広い連帯で「ワクチン・アパルトヘイト」に対抗しよう

世界各国の指導者は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成と、「誰一人取り残さない」ことを確約しています[4]。
保健医療システムの危機に対抗するためには、平時から強靱でレジリエンスのある保健医療システムを作ることが重要だと、人々は痛感しました。十分な資金がなくなると、健康格差はすぐに拡大してしまうことも分かりました。

パンデミックへの対応の大原則として、全ての国で公平に、安価に、タイムリーに、全ての人にワクチンが行き渡るようにしなければなりません。しかし、ワクチン配布に格差が生じる恐れがあれば、COVID-19は克服できません。これでは、国連人権理事会第46回会合の成果文書で指摘されたように、持続可能な開発のための2030アジェンダの進捗が遅れてしまうでしょう。

世界最大の予防接種キャンペーンが開始されてから数カ月が経ちますが、各国へのワクチン分配は平等とはほど遠い状況です。ワクチン開発の早い段階で契約締結し、人口の数倍もの接種数を確保した富裕国もあります。結果、競争が激化し、低所得国の人々がワクチンを受ける順番はずっと後になります。

誰もがCOVID-19ワクチンを受けられるグローバル・プランがない中、世界でもっとも貧しい国々にも公平にワクチンが行き渡るための取り組みとしてCOVAXがあります。この枠組みに連帯を表明し、二国間契約でワクチンプールを共有する国もありますが、低所得国で投与されたワクチンは現在、全体のわずか0.1%に過ぎません。

公平なワクチンの分配を保障するためには、大胆なリーダーシップと「ワクチン・ナショナリズム」を終わらせる必要があります。(民間の医療機関、モバイルクリニック、コミュニティで保健活動をする人々も含め)第一線で働く医療従事者にワクチンを速やかに提供しなければなりません。さらに、ワクチン投与の計画に含まれない人々への投与を、グローバルな規模でワクチン入手が困難な国々で保障しなければなりません。

公平な社会に向けた復興を 

人々がその可能性を最大限に発揮する権利を奪う健康格差に向き合い、解消するため、この世界保健デーに幅広い連帯と迅速な行動を呼びかけます。WHO憲章の原則にも書かれているように、「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです」

コロナ禍によって新たな課題に直面した国際社会にとって今は、よりよい、公平なプロセスを作る好機です。医療の不平等によって取り残された人々が確実に医療を受けられるよう、今なら変化を起こせます。各国の指導者は喫緊の課題として、医療体制の強化に投資しなければなりません。もっとも脆弱で周縁化された人々の健康悪化につながる社会的、経済的な障壁にも、対処しなければなりません。また起こりうる医療危機のダメージを軽減するため、今のうちに対策を強化し、そのための投資も用意しなければなりません。

私たちは、世界のリーダーたちに、誰もが取り残されることなく、すべての人にとってより公平で健康的な世界を築くために、自らの役割を果たすことを強く求めます。IPPFと加盟協会は、誰も取り残さない世界を作っていくことを約束します。医療ケアを必要とする人がどこにいたとしても、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)を含む、質の高い医療サービスを手頃な価格で受けられる世界に。全ての人が健康的な生活を送れるよう、必要なケアを確実に届けていきます。

参照:  

  1. Bambra, Clare, et al. "The COVID-19 pandemic and health inequalities." J Epidemiol Community Health 74.11 (2020): 964-968. 
  2. Millett, Gregorio A., et al. "Assessing differential impacts of COVID-19 on black communities." Annals of epidemiology 47 (2020): 37-44. 
  3. World Economic Forum. “Global Gender Gap Report” March 2021: Geneva. Available at http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2021.pdf 
  4. United Nations, Political Declaration of the High-level Meeting on Universal Health Coverage “Universal health coverage: moving together to build a healthier world”  A/RES/74/2. 2019, United Nations: New York 

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Dr Fabian Cataldo
Dr Fabian Cataldo

Dr Fabian Cataldo has over the past 20 years, he has led research and advocacy efforts in Brazil, Malawi, and several other Southern African countries, with a focus on the social dimensions of care, health activism, HIV care and treatment access, and sexual and reproductive health and rights. Dr Cataldo holds a PhD and Masters in Anthropology.