国際家族計画連盟(IPPF)日本信託基金(JTF)はコミュニティでセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)プロジェクトを実施し、もっとも周縁化され、脆弱な人々のSRH向上を目指しています。5件のJTFプロジェクトについて、SRH介入のジェンダー・プログラミングの質的評価を行いました。この調査では、”Gender at Work Framework”(ジェンダー・アット・ワーク・フレームワーク、genderatwork.org)にある「介入によってジェンダー変容への影響力とグッドプラクティスがどれほど形成できたか」を評価しました。
ジェンダー・アット・ワーク・フレームワーク

成果
プロジェクトでは環境に即したアプローチを実験的に採用しました。資源の乏しい砂漠の国、モーリタニアでは、マリからの難民と受け入れ地域のコミュニティの人々のSRHサービスへのアクセス向上を主な目的としました。ラオスの遠隔地の村々ではセックスの話題はタブーで、安全な性行為の知識が少なかったため、安全で個人情報が守られる空間で基本的な情報と質の高い保健医療を提供するだけでも、コミュニティに大きな変化をもたらしました。シエラレオネでは、貧困と周縁化によって女性と少女たちは物々交換のために性を提供しなければなりませんでした。情報とサービスを提供することで、彼女たちは自分の安全と保護を考えて交渉できるようになりました。インドとパキスタンのプロジェクトでは、性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)、有害なジェンダー規範に取り組みました。女性と少女たちに経済的なエンパワーメントをすることで、伝統的なジェンダー間の力関係に揺さぶりをかけました。
すべてのプロジェクトでコミュニティ全体のアクションがあり、SRHに対する住人の考え方の変容と自分の健康を自分で守る姿勢作りを目指しました。その結果、ラオスとモーリタニアでは口コミの効果、パキスタンとシエラレオネでは住民による支援グループの設立、インドでは女性リーダーの関与がありました。
インドとパキスタンのプロジェクトでは女性と少女の収入創出の重要性が分かりました。彼女らの社会的地位とウェルビーイング(福祉)が向上したからです。シエラレオネとモーリタニアのプロジェクト参加者もSRHの成果が改善するためには経済機会へのアクセスが必要だと言いました。
広大な難民キャンプで啓発活動を行うコミュニティの保健推進員の勇気を讃えます。人々の態度が変わりました。以前は女性がクリニックに避妊法をもらいに来るなんてあり得ないことでした。キャンプの人たちはそれを恥ずかしい、宗教に反した行いだと考えていたからです。
看護師
モーリタニア

以前は十代の若者はカウンセリングに来ませんでした。今は村の保健センターにカウンセリング用の個室があります。そこで、自分の守り方、コンドームの使い方を教えられます。今は十代の子がサービスを受けに通ってくれています。
フェトサマイ、看護師
ラオス

安全なセックスについて、HIVと性感染症から自分を守る方法を知りたかったです。セックスについて尋ねるのは初めは恥ずかしかったですが、大切なことなので訊くことにしました。恥ずかしがっていたら、自分を守るために必要な正確な情報を得られませんから。
ノイ、未婚の女性
ラオス

グッドプラクティス
- 信頼されている機関と連携し、コミュニティの信用を得た。
- 変容をもたらす人を見つけ、その人の周りにコミュニティを形成する。
- SRHサービスが受けやすく、女性と少女をエンパワーメントするものにする。
- 最初に、ジェンダー不平等とSGBVの害について話す。
- コミュニティ全体を巻き込み、行動を制限し有害な規範を列挙する。
- レイプと決まったパートナー以外の人との性的関係によるスティグマ(汚名)と自責の念に打ち勝っていく。
- 不平等に取り組むため、強力で分野横断的な連携パートナーシップを作る。
- 女性と少女に経済的機会と相互に支援しあえる仕組みを作る。
- 優先度の高い問題として少女と若い女性への暴力に取り組む。
- マスコミの力を使って沈黙を破り、変化を求めて啓発する。
- SGBVサバイバーが頼れる強力な照会システムを作り、暴力を可視化する。
他に留意すべきプロジェクトの心得
- ジェンダー変容の実現には年単位(何十年単位)の時間がかかるため、長期的な取り組みを覚悟しておくこと。
- 包括的な枠組み(変容のセオリーなど)を作り、ジェンダー・トランスフォーマティブなアプローチでプログラム戦略とデザインを考えられるようにする。
- ジェンダー・トランスフォーマティブな成功と、コミュニティのトランスフォーマティブな移行のビジョンを持ち、プロジェクト期間を通して学ぶ姿勢を持つ。
- ゲートキーパー(権力を持つ人々)と関わりながら、社会的規範に挑戦したり、取り上げたりすること。
- ポジティブな男性性を受け入れ、ジェンダー平等を促進するために男性と少年たちの関与を求める。
- 政策・法律の改正のキーとなる機関との意味のあるパートナーシップに取り組む。
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