包括的性教育をカリキュラム の一部に:ネパールの挑戦

ネパールで性教育の授業をする若い女性

首都カトマンズから車で1時間弱にある古都、バクタプール。東門の近くにある大きな赤レンガ造りの校舎の窓から、子どもたちの声が聞こえます。早口のネパール語で子どもたちと講師の若い女性とのやりとりが続く中、合間に「性の権利……家族計画……避妊法」といった英単語が聞こえてきます。

「毎週金曜に10代前半のグループが集まり『包括的性教育(CSE)』の授業を行っています。ここで若い人たちが思春期、月経、安全なセックス、HIV、家族計画などについて話します。ネパールのようにとても保守的で、家父長的な文化の強い国では、子どもたちが性の健康について話せるのは、このような授業でしかありません」

本当に最近まで、このような授業は存在しませんでした。IPPFネパール(ネパール家族計画協会:FPAN)による政府への強い働きかけにより、カリキュラムにCSEが含められるようになりました。

FPANはこれからのネパールを作っていく世代、つまり若者たちを見過ごしてはいません。若者向けの活動を中心に、家族計画についての人々の関心 や知識の向上に取り組んでいます。FPANの関係者が学校やコミュニティに出かけていき、若者と話し、若者のボランティアを見つけて活動の運営を任せています。
 

CSE class in Nepal

週1回の授業で講師を務めるスミ・カルブジャさんもFPANのボランティアとして活動する20歳の女性です。「私が学生だったころ、このような情報はまったく手に入りませんでした」とスミさんは言います。「若者がこれらの(自分の健康に関する)問題について知ることは、とても重要です」。FPANのアム・シン・シジャパティ会長 は言います。「ネパールで若者と活動するNGOは、私たちが最初でした。今では多くの国際、国内NGOが若者の活動をしていますが、私たちが始めたものです」

「私たちは、思春期のころの身長、年齢、体重……身体と精神面の変化について習います」と説明するのは14歳のミスマ・コライラさん。ミスマさんはネパール西部のパルパ郡にある、ポールスター・インスティチュートという英語で教える全寮制の中学校の生徒です。「結婚に適した年齢のこと……責任のある親になることの大切さについて学びます」

授業はボランティアによって運営されます。ボランティアのほうが生徒たちと年齢や経験していることが似通っているため、生徒たちの発言に共感し、体験を共有できると考えられるからです。ボランティアたちは研修を受けており、若者たちが心を開き、お互いを認め合うなかで、月経やセックスなどのしばしば人前では話せず、人によっては 害のある誤解をしたままの話題を、オープンに話せる場を作ります。

「一番難しいのは、打ち解けた、話をしやすい雰囲気を作ること(アイスブレーキング)です。社会の作り出した(思考の)壁を壊さないといけません」と話すのはFPANのボランティア、ジェイシュリ・シャルマさん。「多くの人は、セックスを身体だけの関係と考えがちです。私は、セックスは単に性行為のことだけではなく、もっと幅広いものとして説明します。そうして初めて性教育の大切さを理解する人も多いのです」

A CSE class with the youth

「生徒たちは、最初は恥ずかしがっていますが、私たちは『もっと声を上げて話して』と促します。これは誰もが知っているべきことなのですから」と、ボランティアのスラナ・ラジバンダリさんも言います。「(生徒たちには)『月経は自然に起きることで、あなたのお母さんもお姉さんも経験している』と教えます」

FPANではユースセンターも運営しています。そこは「若者が好きな時に利用して、性に関する様々な問題について話し合うことができる場」で、「(センターの)四方に壁がある中では、安心して何でも話せます」とスミさんが言います。授業やユースセンターの活動を通して知識を得た生徒たちが、今度はほかの生徒に性教育を伝える立場になります。「こうして若者の間で知識が広がっています。1人から2人、2人から4人という調子です」