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2024年に世界はどう動くのか

Story

2024年に世界はどう動くのか

2024年のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利: SRHR)の動向と今後の課題について考察します。

2024年はどのような年になるのでしょう。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ/ジャスティス(性と生殖に関する健康と権利/正義: SRHRJ)に関連した動きについていくつかのトピックで検証します。

【政治】

2024年には、世界57カ国で大統領選挙、議会選挙、あるいはその両方を含む75の国政選挙が行われる異例かつ歴史的な年となります。25億人の有権者が参加し、短期間にかつてない数の選挙が行われることにより、政治的バランスが大きく変化する可能性が指摘されています。「地政学的不確実性(Geopolitical Volatility)」が今年最大の懸念材料であるとの見方もあります。

6月の欧州議会選挙では、27の加盟国から4億人の有権者が投票し、720人の欧州議会議員を選出。国境を超えた世界最大の選挙となります。欧州懐疑派や極右政党の台頭が懸念される中、欧州と世界の民主主義の今後の動向、そして女性やLGBTQI+の人々の権利の擁護に影響を与える、極めて重要な選挙です。

11月のアメリカ大統領選挙では、トランプ前大統領が、バイデン大統領と再び対決します。インドの総選挙では、ポピュリスト、ナショナリスト、権威主義者とも評されるモディ首相が再選を目指します。

このように保守系候補が注目を集める一方、メキシコでは2024年に中絶を支持する女性大統領が誕生します。候補者である左派のパルド元メキシコシティ市長、ガルベス元上院議員両者ともに、中絶の権利の支持を表明しています。セネガルでは、2月25日に79人の立候補者のなかから新大統領が選出されます。

懸念材料の多い2024年ですが、世界中の有権者が、身体の自己決定権、SRHサービスへのアクセス、それぞれのリプロダクティブ・ジャスティス(生殖に関する正義)を尊重していることを基に、IPPFではこれまでの実績を活かしたサービス提供を実施していきます。

no.1

【気候変動】

気候変動は引き続き、人々の生活と人権を脅かしています。2023年は、10万年ぶりといわれる温暖な年でしたが、2024年はそれを上回る可能性があります。現在、世界では23億人が水不足の国に住んでおり、その中でも7億3,300万人は危機的状況にあります。この数字は2024年にさらに悪化すると見込まれ、最も影響を受けるのは、女性と女児です。また、気候危機はSRHRにも大きな影響を及ぼします。IPPFによる「2030年における性と生殖に関する健康と権利」レポートによれば、今後10年でIPPFのクライアントの3分の2は不平等が拡大した国に住み、気候危機によってこの格差は拡大すると予想されています。

キリバスでは、キリバス家族健康協会(KFHA)の人道支援ユースグループの若者たちが、災害時の迅速な対応を計画し、活動をリードしています。

ケニアでは、2022年に東部と北部で3年連続の危機的な干ばつが起き、その結果、アフリカの角(Horn of Africa)では、大規模な人道危機が発生しました。IPPFは、ケニアリプロダクティブヘルスネットワーク (RHNK)を通じてSRHサービスを提供することにより、この緊急事態に対応しました。

私たちは2024 年も環境アドボカシーに努め、人道危機における SRHRサービス 、特にコミュニティや避難民のためのSRHサービスを提供し続けます。

©️IPPF/Hannah Maule-ffinch

no.2

【紛争】

ガザ地区は2023年10月以来砲撃下にあり、人々は未曾有の人道的危機に直面しつづけています。ガザにあるIPPFパレスチナ(PFPPA)唯一の保健センターは、イスラエルの攻撃によって破壊されました。ガザにいるスタッフは、絶え間ない砲撃から避難しつつ、医療物資供給全面封鎖の中、限られた物資と資源で地域の人々に医療サービスを提供しています。他の人道支援団体同様、我々は膨大なニーズに応えるための援助物資を配布することがほぼ不可能な状況です。「PFPPAの医療システムは、イスラエルによって繰り返し標的となり、ガザのパレスチナ人は、SRHRを享受できていません。支援システムが崩壊するにつれ、女性や女児はSRHRからどんどん遠のいています」と、アマル・アワダッラーPFPPA事務局長は言っています。

ガザに住む230万人の人々の安全を祈りつつ、妊産婦や新生児を含め、これ以上の犠牲者を出さないための唯一の策として、即時の完全な停戦が求められます。今後もパートナーたちとともに安全第一に、ガザへの援助活動を継続していくことが求められます。

SGBVが増加しているスーダン、難民危機が勃発しているアルメニアなど、世界の人道危機状況でSRHRサービスを提供することにより、IPPFとMAは、紛争の犠牲となった人々への対応の最前線に立ってきました。ロシアが侵攻したウクライナでは、国内避難民やその他難民の権利に基づくサービスを提供するため、ウクライナおよび近隣諸国で活動しています。

©️IPPF/SFPA/2023

no.3

【中絶の権利】

2022年6月に、米連邦最高裁はロー対ウェイド裁判を覆しました。以来、アメリカにおいて人工妊娠中絶政策は各州の裁量に委ねられ、2023年12月現在、14の州が全面的に禁止し、7つの州が中絶へのアクセスを厳しく制限しています。その中、IPPFアメリカ(PPFA)は、安全かつ合法的な中絶へのアクセスを維持させるべく、たゆまぬ努力を続けています。カンザス州やケンタッキー州のような保守勢力が強い州でも、中絶の権利は投票で守られている状況です。

南米では、数十年にわたるフェミニストの連帯と行動が実を結び、「緑の波」が変化を起こし続けています。アルゼンチンでは2020年に、コロンビアでは2022年、メキシコでは2023年に、中絶が非犯罪化されました。運動はまだ始まったばかりであり、今後の進展に期待が高まります。

©️Wara Vargas

no.4

【LGBTIQ+へのバックラッシュ】

近年、LGBTIQ+への反発(バックラッシュ)が高まっています。ウガンダでは「反同性愛法(Anti-gay Law)」が成立し、ハンガリーでは未成年者へのジェンダーやセクシュアリティに関する情報提供が禁止され、アメリカのテキサス州では性別適合手術が児童虐待と認定され、禁止または制限されています。

一方、2023年には、エストニア、スロベニア、アンドラ公国の3カ国で同性婚が合法化されました。日本では、地方裁判所が同性婚を法的に認めないことは違憲であるとの判決を下し、ネパールとナミビアの最高裁は、海外で結婚した同性カップルを国内でも法的に認めるとしました。

世界における同性婚の法制化状況を調査しているヒューマン・ライツ・キャンペーン財団によれば、2024年にはさらに多くの国が同性婚を合法化する可能性が高く、特にチェコ共和国、インド、日本、ネパール、フィリピン、タイでは、結婚の平等に対する国民の支持が高くなっています。

©️Aiden Craver/Unsplash

no.5

when

多くのSRHR対応が必要となることが予想される現在、私たちひとりひとりのコミットメントが大切です。変革は、連帯行動によってもたらされます。私たちは、MAやパートナー、草の根運動グループ、若者を中心とする団体などと、SRHRを擁護するための行動を共にします。

IPPFは、2024年がフェミニストとセクシュアル・ライツ運動にとって成功の年となることを願っています。誰でも、どこでも、質の高いSRHRを受けられることが私たちの願いです。