- - -
bank-phrom-Tzm3Oyu_6sk-unsplash

ニュース

IPPFからの最新ニュース

スポットライト

A selection of stories from across the foundation and our partners

ukraine1year

ウクライナ

News item

ウクライナ侵攻から1年「私たちは戦時下の民ではなく、力強い、レジリエンスと独自の価値観を持つ人々です」

2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、IPPFはウクライナと周辺国のパートナー団体を支援し、戦地で暮らす人々へに必要なSRH情報とサービスを提供してきました。
サイドイベントの登壇者たち
news item

| 28 December 2017

WHO事務局長 ジェンダー平等と女性の健康の大切さを訴える~UHCフォーラムサイドイベント 100人超が来場~

国際家族計画連盟(IPPF)は、国連人口基金(UNFPA)と、IPPF東京連絡事務所であるジョイセフ(JOICFP)とともに、2017年12月15日、「UHCフォーラム2017」公式サイドイベント「UHCとユニバーサル・リプロダクティブ・ヘルス・カバレッジ~女性・若者が直面する課題に挑む~」を東京都内で開きました。 約40ある公式サイドイベントのなかでも、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)の視点はユニークで、WHO(世界保健機関)事務局長、国際保健を推進する日本の国会議員などがスピーカーとなり、約100人が参加する大規模なサイドイベントとなりました。 第1部では、大局的な観点から、UHC達成に必要なリーダーシップ、各国の実情に合わせた施策、そしてその時に女性の視点を取り込む大切さが述べられました。 基調講演をしたWHO事務局長テドロス・アダノム氏は、「誰一人取り残さない」ために、ジェンダー平等とSRHRは中心課題として取り組まないといけないことを強調しました。参議院議員の武見敬三氏は、日本のUHCの課題からみえる今後の問題点を説明し、高齢化社会のなか、非感染性疾患の増加、高齢女性の貧困、介護人材不足への対応の必要性を指摘しました。外務省国際協力局参事官の塚田玉樹氏は、世界の女性の地位向上とともに、SRHの大切さ、それに向けた日本の貢献を訴えました。 IPPF次期事務局長Dr アルバロ・ベルメホは、世界中の多くの人々、特に若者や貧困層は、SRHサービスを自己資金で利用することが多いため、自己負担を減らすよう、UHCを国の保健財政だけの問題とせず、「誰一人取り残さない」サービス供給の観点から考える必要があるとしました。 このほか、UNFPAテクニカル・スペシャリストのハワード・フリードマン氏、「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略(Every Woman Every Child)」国連事務局アカウンタビリティー確保のための独立パネル代表のエリザベス・メーソン氏も登壇し、若者に特化したサービスやデータ収集の大切さなどを述べました。   第2部では、コミュニティの視点にテーマを移し、各地で抱える問題や若者の立場を考慮しながら、住民主体のサービスによる、UHC達成を議論しました。匿名で質問を投稿できるウェブサイトも利用し、若者を含めて活発な意見交換が展開されました。 IPPF アフリカ地域事務局長ルシアン・クアク氏は、米国のメキシコシティ政策によって若者の避妊具へのアクセスの障害が出たことを問題視するとともに、人工妊娠中絶に対して厳しい国があること、政情不安によって学校に行けない若者もいるなどアフリカが抱える課題を挙げ、政治の力、計画、活動、人材、実績が求められることを訴えました。 スーダン家族計画協会(SFPA)会長バシル・エリマム氏は、スーダンでは国内避難民のSRHの問題が深刻で、さらに各地で治安不安、貧困、地方部でヘルスサービス利用しにくいなどの問題を指摘。UHC達成のためには、国内避難民を含めたSRHサービス拡大が大切であると強調しました。また保守的な考えがあるため、SFPAは保健省や教員に早い段階で説明して協働で取り組んでいるという活動の工夫も説明しました。 ファミリー・ヘルス・オプションズ・ケニア(FHOK)事務局長エドワード・マリエンガ氏は、FHOKは、米国などドナー協力を得て、若者へのサービス、妊産婦死亡率削減、施設での分娩や避妊実行率を上げる取り組みに成果を上げてきたものの、資金が減らされている現状を説明。若者のためには避妊具の提供や、妊娠・出産した学生が偏見を受けないよう啓発を含めたユースフレンドリーサービスが大切だと訴えました。 最後に日本の若者を代表し、Japan Youth Platform for Sustainability代表・唐木まりも氏は、日本で女性が考える「美」には、社会の美の意識の刷り込みがあることから、既存のジェンダー意識にとらわれない女性の健康と、避妊を含めて女性の主体的な選択、女性がNOと言いやすい環境を社会全体で作っていく必要性があることを訴えました。 ※こちらの記事は、ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可を得て転載しています。  

サイドイベントの登壇者たち
news_item

| 28 December 2017

WHO事務局長 ジェンダー平等と女性の健康の大切さを訴える~UHCフォーラムサイドイベント 100人超が来場~

国際家族計画連盟(IPPF)は、国連人口基金(UNFPA)と、IPPF東京連絡事務所であるジョイセフ(JOICFP)とともに、2017年12月15日、「UHCフォーラム2017」公式サイドイベント「UHCとユニバーサル・リプロダクティブ・ヘルス・カバレッジ~女性・若者が直面する課題に挑む~」を東京都内で開きました。 約40ある公式サイドイベントのなかでも、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)の視点はユニークで、WHO(世界保健機関)事務局長、国際保健を推進する日本の国会議員などがスピーカーとなり、約100人が参加する大規模なサイドイベントとなりました。 第1部では、大局的な観点から、UHC達成に必要なリーダーシップ、各国の実情に合わせた施策、そしてその時に女性の視点を取り込む大切さが述べられました。 基調講演をしたWHO事務局長テドロス・アダノム氏は、「誰一人取り残さない」ために、ジェンダー平等とSRHRは中心課題として取り組まないといけないことを強調しました。参議院議員の武見敬三氏は、日本のUHCの課題からみえる今後の問題点を説明し、高齢化社会のなか、非感染性疾患の増加、高齢女性の貧困、介護人材不足への対応の必要性を指摘しました。外務省国際協力局参事官の塚田玉樹氏は、世界の女性の地位向上とともに、SRHの大切さ、それに向けた日本の貢献を訴えました。 IPPF次期事務局長Dr アルバロ・ベルメホは、世界中の多くの人々、特に若者や貧困層は、SRHサービスを自己資金で利用することが多いため、自己負担を減らすよう、UHCを国の保健財政だけの問題とせず、「誰一人取り残さない」サービス供給の観点から考える必要があるとしました。 このほか、UNFPAテクニカル・スペシャリストのハワード・フリードマン氏、「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略(Every Woman Every Child)」国連事務局アカウンタビリティー確保のための独立パネル代表のエリザベス・メーソン氏も登壇し、若者に特化したサービスやデータ収集の大切さなどを述べました。   第2部では、コミュニティの視点にテーマを移し、各地で抱える問題や若者の立場を考慮しながら、住民主体のサービスによる、UHC達成を議論しました。匿名で質問を投稿できるウェブサイトも利用し、若者を含めて活発な意見交換が展開されました。 IPPF アフリカ地域事務局長ルシアン・クアク氏は、米国のメキシコシティ政策によって若者の避妊具へのアクセスの障害が出たことを問題視するとともに、人工妊娠中絶に対して厳しい国があること、政情不安によって学校に行けない若者もいるなどアフリカが抱える課題を挙げ、政治の力、計画、活動、人材、実績が求められることを訴えました。 スーダン家族計画協会(SFPA)会長バシル・エリマム氏は、スーダンでは国内避難民のSRHの問題が深刻で、さらに各地で治安不安、貧困、地方部でヘルスサービス利用しにくいなどの問題を指摘。UHC達成のためには、国内避難民を含めたSRHサービス拡大が大切であると強調しました。また保守的な考えがあるため、SFPAは保健省や教員に早い段階で説明して協働で取り組んでいるという活動の工夫も説明しました。 ファミリー・ヘルス・オプションズ・ケニア(FHOK)事務局長エドワード・マリエンガ氏は、FHOKは、米国などドナー協力を得て、若者へのサービス、妊産婦死亡率削減、施設での分娩や避妊実行率を上げる取り組みに成果を上げてきたものの、資金が減らされている現状を説明。若者のためには避妊具の提供や、妊娠・出産した学生が偏見を受けないよう啓発を含めたユースフレンドリーサービスが大切だと訴えました。 最後に日本の若者を代表し、Japan Youth Platform for Sustainability代表・唐木まりも氏は、日本で女性が考える「美」には、社会の美の意識の刷り込みがあることから、既存のジェンダー意識にとらわれない女性の健康と、避妊を含めて女性の主体的な選択、女性がNOと言いやすい環境を社会全体で作っていく必要性があることを訴えました。 ※こちらの記事は、ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可を得て転載しています。  

Neonatal device IPPF Ethiopia
news item

| 07 September 2016

エチオピアで女性と若者の健康と権利を守るNGO

※ こちらの記事は、IPPF東京連絡事務所を務める公益財団法人ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可をいただいて転載しています。元の記事はこちらです。 2016年8月19日 2016年8月上旬、国際家族計画連盟(IPPF)のエチオピア加盟協会「IPPFエチオピア」の本部と併設のクリニックを、ジョイセフ職員が訪ねました。 IPPFエチオピアは、現地ではFamily Guidance Association of Ethiopia(FGAE)の名で広く知られています。 IPPFエチオピアは、IPPFが取り組むセクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR、性と生殖に関する健康と権利)を推進するNGOです。アフリカの非常に多くの国にあるIPPFの加盟協会の中でも、大きな組織の一つです。 日本の約3倍の国土に支部が8つあり、クリニックは55あります。若者への包括的性教育、医療従事者の研修、クリニックでの避妊や妊娠・出産へのアドバイスや子宮頸がん検診など、事業は実にさまざまです。常勤スタッフは700人、一線で活躍するボランティアは1700人にも上ります。また、分娩台など多くの設備が日本政府の資金協力で設置されています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 医師ナドゥ・メコネン(Nadew Mekonnen)さんの話を紹介します。 Q:医師になったきっかけは何ですか。 A:母は7人子どもを産みましたが、生き残ったのは2人だけで、その一人が私です。当時、特に地方では予防接種ができなかったり、衛生状態が悪かったり、近くに病院がなかったりして、多くの子どもが命を落としていました。そんな状況を変えたいと思って医師を志しました。 Q:なぜこのクリニックで働いているのですか。 A:母はもちろん、すべての女性を尊敬しており、女性たちのために働きたいからです。女性たちは家事や育児に忙しく、お金も節約し、自分のためには病院に行きません。そんな女性たちのためにサービスを提供できるこの病院で働けることに大きなやりがいを感じています。また、多くの病院では一度に一つのサービスしか受けられないのですが、ここではそれぞれのニーズに応じて、一度に三つ以上のサービスを提供しています。また、多くのサービスが無料であることから、患者さんの満足度が高いことがうれしいです。 Q:課題は何でしょうか。 A:スタッフはよく訓練されていますが、人数が足りず、部屋も不十分です。家族計画や性暴力被害者へのカウンセリングなど、長期的支援が必要なサービスも多いので、長期的に質の高いサービスを持続できるような資金確保が課題です。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: エチオピアでは今も18歳未満の女児の「児童婚」や、女性性器切除(FGM)の慣習が一部で残り、IPPFエチオピアはジェンダー平等や女性のエンパワーメントの観点でも、政府と連携して活動しています。セックス・ワーカーと呼ばれる性産業従事者に特化したサービスも提供しています。 最近は特に若者を対象にした事業を重視しています。気軽に相談に来られる「ユース・センター」の設置や、児童・生徒対象に卓球や演劇などのクラブをつくって活動し、男女ともに楽しみながら、自分の権利と健康を守ることを促しています。 (アドボカシーグループ 宮地佳那子)

Neonatal device IPPF Ethiopia
news_item

| 07 September 2016

エチオピアで女性と若者の健康と権利を守るNGO

※ こちらの記事は、IPPF東京連絡事務所を務める公益財団法人ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可をいただいて転載しています。元の記事はこちらです。 2016年8月19日 2016年8月上旬、国際家族計画連盟(IPPF)のエチオピア加盟協会「IPPFエチオピア」の本部と併設のクリニックを、ジョイセフ職員が訪ねました。 IPPFエチオピアは、現地ではFamily Guidance Association of Ethiopia(FGAE)の名で広く知られています。 IPPFエチオピアは、IPPFが取り組むセクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR、性と生殖に関する健康と権利)を推進するNGOです。アフリカの非常に多くの国にあるIPPFの加盟協会の中でも、大きな組織の一つです。 日本の約3倍の国土に支部が8つあり、クリニックは55あります。若者への包括的性教育、医療従事者の研修、クリニックでの避妊や妊娠・出産へのアドバイスや子宮頸がん検診など、事業は実にさまざまです。常勤スタッフは700人、一線で活躍するボランティアは1700人にも上ります。また、分娩台など多くの設備が日本政府の資金協力で設置されています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 医師ナドゥ・メコネン(Nadew Mekonnen)さんの話を紹介します。 Q:医師になったきっかけは何ですか。 A:母は7人子どもを産みましたが、生き残ったのは2人だけで、その一人が私です。当時、特に地方では予防接種ができなかったり、衛生状態が悪かったり、近くに病院がなかったりして、多くの子どもが命を落としていました。そんな状況を変えたいと思って医師を志しました。 Q:なぜこのクリニックで働いているのですか。 A:母はもちろん、すべての女性を尊敬しており、女性たちのために働きたいからです。女性たちは家事や育児に忙しく、お金も節約し、自分のためには病院に行きません。そんな女性たちのためにサービスを提供できるこの病院で働けることに大きなやりがいを感じています。また、多くの病院では一度に一つのサービスしか受けられないのですが、ここではそれぞれのニーズに応じて、一度に三つ以上のサービスを提供しています。また、多くのサービスが無料であることから、患者さんの満足度が高いことがうれしいです。 Q:課題は何でしょうか。 A:スタッフはよく訓練されていますが、人数が足りず、部屋も不十分です。家族計画や性暴力被害者へのカウンセリングなど、長期的支援が必要なサービスも多いので、長期的に質の高いサービスを持続できるような資金確保が課題です。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: エチオピアでは今も18歳未満の女児の「児童婚」や、女性性器切除(FGM)の慣習が一部で残り、IPPFエチオピアはジェンダー平等や女性のエンパワーメントの観点でも、政府と連携して活動しています。セックス・ワーカーと呼ばれる性産業従事者に特化したサービスも提供しています。 最近は特に若者を対象にした事業を重視しています。気軽に相談に来られる「ユース・センター」の設置や、児童・生徒対象に卓球や演劇などのクラブをつくって活動し、男女ともに楽しみながら、自分の権利と健康を守ることを促しています。 (アドボカシーグループ 宮地佳那子)

Rym Fayala
news item

| 26 September 2016

Interview 「住民がスタッフ 紛争地でも活動継続」

IPPF(国際家族計画連盟) アラブワールド地域事務局 渉外部長 リーム・ファヤラさん チュニジア出身で、医師でもあるリーム・ファヤラさんに、中東地域のセクシュアル/リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)について聞きました。 ― アラブ地域のSRHR の現状を教えてください。 アラブ世界地域には14カ国にIPPFの加盟協会があり、現在、そのうち5カ国が紛争国です。これらの国では、紛争発生以後SRHRの状況が悪化しています。シリアには400 万人の難民がおり、国内避難民は700 万人にも及びます。国内避難民の75%が女性と子どもと推定されています。難民や国内避難民の女性たちは、医療施設の破壊や医師の不在などにより、SRHR関連サービスを含む通常の保健医療サービスが受けられないだけでなく、性暴力に遭って精神的なトラウマも抱えるなど、紛争のSRHRへの影響は、非常に深刻です。 シリア以外でも、性暴力の経験者はヨルダンやエジプトで3 人に1 人、チュニジアでは47%にも上るなど、課題が多くあります。 ― 性暴力のほかに、女性の健康に関する課題は特に何がありますか。 まず高い妊産婦死亡率が挙げられます。ソマリアでは、出生10 万あたり約800 人(2013 年データ)と非常に高い状態です。また、紛争地では妊産婦死亡率が悪化しました。シリア危機では、2010 年に出生10 万あたり56 人だった妊産婦死亡率が、2013には65 人になってしまいました。 またアラブ地域では、18 歳になる前に結婚する女性も数多くいます。これは親が性犯罪や性暴力から「娘を守るために」早く結婚させるという現実を反映しています。女性性器切除(FGM)もモーリタリア、スーダンなどでいまだに深刻です。 ― IPPF の加盟協会はどのような活動をしていますか 移動クリニックと診療所を通して、SRHRを中心とした保健サービスとカウンセリングによる精神的ケアを提供しています。シリアでは、2013 年と2014 年に大幅にサービス提供件数を増やすなど、ニーズに応じて活動を拡大しました。実際に現場で活動しているスタッフは、地元住民でもあり、地域に根付いていますから、IS(イスラム国)に支配されるようになった地域でも、活動を継続しています。 このように非常に混乱した紛争地で人々のSRHRニーズに応える活動ができている団体はIPPFのほかに類を見ません。 また、スーダンやモーリタニア等では、IPPF・日本信託基金(JTF)の支援によるプロジェクトを実施しており、日本政府に感謝しています。サービス提供数は増やしていますが、すべてのニーズには応えられていません。今後もさらなるご支援を心よりお願いいたします。   <プロフィール> アドボカシーや資金調達などを担当。チュニジア保健省「人口とリプロダクティブヘルス・研修・研究センター」所長、国連人口基金(UNFPA)チュニジア事務所でのリビア人難民に対するリプロダクティブヘルス関連支援のコーディネーターなどを経て現職。   *この記事は、公益財団法人ジョイセフが発行するリプロダクティブ・ヘルスに関するオピニオンマガジン、アールエイチ・プラス(RH+)に掲載されたインタビュー記事を、許可を得て転載しています。

Rym Fayala
news_item

| 30 March 2016

Interview 「住民がスタッフ 紛争地でも活動継続」

IPPF(国際家族計画連盟) アラブワールド地域事務局 渉外部長 リーム・ファヤラさん チュニジア出身で、医師でもあるリーム・ファヤラさんに、中東地域のセクシュアル/リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)について聞きました。 ― アラブ地域のSRHR の現状を教えてください。 アラブ世界地域には14カ国にIPPFの加盟協会があり、現在、そのうち5カ国が紛争国です。これらの国では、紛争発生以後SRHRの状況が悪化しています。シリアには400 万人の難民がおり、国内避難民は700 万人にも及びます。国内避難民の75%が女性と子どもと推定されています。難民や国内避難民の女性たちは、医療施設の破壊や医師の不在などにより、SRHR関連サービスを含む通常の保健医療サービスが受けられないだけでなく、性暴力に遭って精神的なトラウマも抱えるなど、紛争のSRHRへの影響は、非常に深刻です。 シリア以外でも、性暴力の経験者はヨルダンやエジプトで3 人に1 人、チュニジアでは47%にも上るなど、課題が多くあります。 ― 性暴力のほかに、女性の健康に関する課題は特に何がありますか。 まず高い妊産婦死亡率が挙げられます。ソマリアでは、出生10 万あたり約800 人(2013 年データ)と非常に高い状態です。また、紛争地では妊産婦死亡率が悪化しました。シリア危機では、2010 年に出生10 万あたり56 人だった妊産婦死亡率が、2013には65 人になってしまいました。 またアラブ地域では、18 歳になる前に結婚する女性も数多くいます。これは親が性犯罪や性暴力から「娘を守るために」早く結婚させるという現実を反映しています。女性性器切除(FGM)もモーリタリア、スーダンなどでいまだに深刻です。 ― IPPF の加盟協会はどのような活動をしていますか 移動クリニックと診療所を通して、SRHRを中心とした保健サービスとカウンセリングによる精神的ケアを提供しています。シリアでは、2013 年と2014 年に大幅にサービス提供件数を増やすなど、ニーズに応じて活動を拡大しました。実際に現場で活動しているスタッフは、地元住民でもあり、地域に根付いていますから、IS(イスラム国)に支配されるようになった地域でも、活動を継続しています。 このように非常に混乱した紛争地で人々のSRHRニーズに応える活動ができている団体はIPPFのほかに類を見ません。 また、スーダンやモーリタニア等では、IPPF・日本信託基金(JTF)の支援によるプロジェクトを実施しており、日本政府に感謝しています。サービス提供数は増やしていますが、すべてのニーズには応えられていません。今後もさらなるご支援を心よりお願いいたします。   <プロフィール> アドボカシーや資金調達などを担当。チュニジア保健省「人口とリプロダクティブヘルス・研修・研究センター」所長、国連人口基金(UNFPA)チュニジア事務所でのリビア人難民に対するリプロダクティブヘルス関連支援のコーディネーターなどを経て現職。   *この記事は、公益財団法人ジョイセフが発行するリプロダクティブ・ヘルスに関するオピニオンマガジン、アールエイチ・プラス(RH+)に掲載されたインタビュー記事を、許可を得て転載しています。

サイドイベントの登壇者たち
news item

| 28 December 2017

WHO事務局長 ジェンダー平等と女性の健康の大切さを訴える~UHCフォーラムサイドイベント 100人超が来場~

国際家族計画連盟(IPPF)は、国連人口基金(UNFPA)と、IPPF東京連絡事務所であるジョイセフ(JOICFP)とともに、2017年12月15日、「UHCフォーラム2017」公式サイドイベント「UHCとユニバーサル・リプロダクティブ・ヘルス・カバレッジ~女性・若者が直面する課題に挑む~」を東京都内で開きました。 約40ある公式サイドイベントのなかでも、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)の視点はユニークで、WHO(世界保健機関)事務局長、国際保健を推進する日本の国会議員などがスピーカーとなり、約100人が参加する大規模なサイドイベントとなりました。 第1部では、大局的な観点から、UHC達成に必要なリーダーシップ、各国の実情に合わせた施策、そしてその時に女性の視点を取り込む大切さが述べられました。 基調講演をしたWHO事務局長テドロス・アダノム氏は、「誰一人取り残さない」ために、ジェンダー平等とSRHRは中心課題として取り組まないといけないことを強調しました。参議院議員の武見敬三氏は、日本のUHCの課題からみえる今後の問題点を説明し、高齢化社会のなか、非感染性疾患の増加、高齢女性の貧困、介護人材不足への対応の必要性を指摘しました。外務省国際協力局参事官の塚田玉樹氏は、世界の女性の地位向上とともに、SRHの大切さ、それに向けた日本の貢献を訴えました。 IPPF次期事務局長Dr アルバロ・ベルメホは、世界中の多くの人々、特に若者や貧困層は、SRHサービスを自己資金で利用することが多いため、自己負担を減らすよう、UHCを国の保健財政だけの問題とせず、「誰一人取り残さない」サービス供給の観点から考える必要があるとしました。 このほか、UNFPAテクニカル・スペシャリストのハワード・フリードマン氏、「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略(Every Woman Every Child)」国連事務局アカウンタビリティー確保のための独立パネル代表のエリザベス・メーソン氏も登壇し、若者に特化したサービスやデータ収集の大切さなどを述べました。   第2部では、コミュニティの視点にテーマを移し、各地で抱える問題や若者の立場を考慮しながら、住民主体のサービスによる、UHC達成を議論しました。匿名で質問を投稿できるウェブサイトも利用し、若者を含めて活発な意見交換が展開されました。 IPPF アフリカ地域事務局長ルシアン・クアク氏は、米国のメキシコシティ政策によって若者の避妊具へのアクセスの障害が出たことを問題視するとともに、人工妊娠中絶に対して厳しい国があること、政情不安によって学校に行けない若者もいるなどアフリカが抱える課題を挙げ、政治の力、計画、活動、人材、実績が求められることを訴えました。 スーダン家族計画協会(SFPA)会長バシル・エリマム氏は、スーダンでは国内避難民のSRHの問題が深刻で、さらに各地で治安不安、貧困、地方部でヘルスサービス利用しにくいなどの問題を指摘。UHC達成のためには、国内避難民を含めたSRHサービス拡大が大切であると強調しました。また保守的な考えがあるため、SFPAは保健省や教員に早い段階で説明して協働で取り組んでいるという活動の工夫も説明しました。 ファミリー・ヘルス・オプションズ・ケニア(FHOK)事務局長エドワード・マリエンガ氏は、FHOKは、米国などドナー協力を得て、若者へのサービス、妊産婦死亡率削減、施設での分娩や避妊実行率を上げる取り組みに成果を上げてきたものの、資金が減らされている現状を説明。若者のためには避妊具の提供や、妊娠・出産した学生が偏見を受けないよう啓発を含めたユースフレンドリーサービスが大切だと訴えました。 最後に日本の若者を代表し、Japan Youth Platform for Sustainability代表・唐木まりも氏は、日本で女性が考える「美」には、社会の美の意識の刷り込みがあることから、既存のジェンダー意識にとらわれない女性の健康と、避妊を含めて女性の主体的な選択、女性がNOと言いやすい環境を社会全体で作っていく必要性があることを訴えました。 ※こちらの記事は、ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可を得て転載しています。  

サイドイベントの登壇者たち
news_item

| 28 December 2017

WHO事務局長 ジェンダー平等と女性の健康の大切さを訴える~UHCフォーラムサイドイベント 100人超が来場~

国際家族計画連盟(IPPF)は、国連人口基金(UNFPA)と、IPPF東京連絡事務所であるジョイセフ(JOICFP)とともに、2017年12月15日、「UHCフォーラム2017」公式サイドイベント「UHCとユニバーサル・リプロダクティブ・ヘルス・カバレッジ~女性・若者が直面する課題に挑む~」を東京都内で開きました。 約40ある公式サイドイベントのなかでも、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)の視点はユニークで、WHO(世界保健機関)事務局長、国際保健を推進する日本の国会議員などがスピーカーとなり、約100人が参加する大規模なサイドイベントとなりました。 第1部では、大局的な観点から、UHC達成に必要なリーダーシップ、各国の実情に合わせた施策、そしてその時に女性の視点を取り込む大切さが述べられました。 基調講演をしたWHO事務局長テドロス・アダノム氏は、「誰一人取り残さない」ために、ジェンダー平等とSRHRは中心課題として取り組まないといけないことを強調しました。参議院議員の武見敬三氏は、日本のUHCの課題からみえる今後の問題点を説明し、高齢化社会のなか、非感染性疾患の増加、高齢女性の貧困、介護人材不足への対応の必要性を指摘しました。外務省国際協力局参事官の塚田玉樹氏は、世界の女性の地位向上とともに、SRHの大切さ、それに向けた日本の貢献を訴えました。 IPPF次期事務局長Dr アルバロ・ベルメホは、世界中の多くの人々、特に若者や貧困層は、SRHサービスを自己資金で利用することが多いため、自己負担を減らすよう、UHCを国の保健財政だけの問題とせず、「誰一人取り残さない」サービス供給の観点から考える必要があるとしました。 このほか、UNFPAテクニカル・スペシャリストのハワード・フリードマン氏、「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略(Every Woman Every Child)」国連事務局アカウンタビリティー確保のための独立パネル代表のエリザベス・メーソン氏も登壇し、若者に特化したサービスやデータ収集の大切さなどを述べました。   第2部では、コミュニティの視点にテーマを移し、各地で抱える問題や若者の立場を考慮しながら、住民主体のサービスによる、UHC達成を議論しました。匿名で質問を投稿できるウェブサイトも利用し、若者を含めて活発な意見交換が展開されました。 IPPF アフリカ地域事務局長ルシアン・クアク氏は、米国のメキシコシティ政策によって若者の避妊具へのアクセスの障害が出たことを問題視するとともに、人工妊娠中絶に対して厳しい国があること、政情不安によって学校に行けない若者もいるなどアフリカが抱える課題を挙げ、政治の力、計画、活動、人材、実績が求められることを訴えました。 スーダン家族計画協会(SFPA)会長バシル・エリマム氏は、スーダンでは国内避難民のSRHの問題が深刻で、さらに各地で治安不安、貧困、地方部でヘルスサービス利用しにくいなどの問題を指摘。UHC達成のためには、国内避難民を含めたSRHサービス拡大が大切であると強調しました。また保守的な考えがあるため、SFPAは保健省や教員に早い段階で説明して協働で取り組んでいるという活動の工夫も説明しました。 ファミリー・ヘルス・オプションズ・ケニア(FHOK)事務局長エドワード・マリエンガ氏は、FHOKは、米国などドナー協力を得て、若者へのサービス、妊産婦死亡率削減、施設での分娩や避妊実行率を上げる取り組みに成果を上げてきたものの、資金が減らされている現状を説明。若者のためには避妊具の提供や、妊娠・出産した学生が偏見を受けないよう啓発を含めたユースフレンドリーサービスが大切だと訴えました。 最後に日本の若者を代表し、Japan Youth Platform for Sustainability代表・唐木まりも氏は、日本で女性が考える「美」には、社会の美の意識の刷り込みがあることから、既存のジェンダー意識にとらわれない女性の健康と、避妊を含めて女性の主体的な選択、女性がNOと言いやすい環境を社会全体で作っていく必要性があることを訴えました。 ※こちらの記事は、ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可を得て転載しています。  

Neonatal device IPPF Ethiopia
news item

| 07 September 2016

エチオピアで女性と若者の健康と権利を守るNGO

※ こちらの記事は、IPPF東京連絡事務所を務める公益財団法人ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可をいただいて転載しています。元の記事はこちらです。 2016年8月19日 2016年8月上旬、国際家族計画連盟(IPPF)のエチオピア加盟協会「IPPFエチオピア」の本部と併設のクリニックを、ジョイセフ職員が訪ねました。 IPPFエチオピアは、現地ではFamily Guidance Association of Ethiopia(FGAE)の名で広く知られています。 IPPFエチオピアは、IPPFが取り組むセクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR、性と生殖に関する健康と権利)を推進するNGOです。アフリカの非常に多くの国にあるIPPFの加盟協会の中でも、大きな組織の一つです。 日本の約3倍の国土に支部が8つあり、クリニックは55あります。若者への包括的性教育、医療従事者の研修、クリニックでの避妊や妊娠・出産へのアドバイスや子宮頸がん検診など、事業は実にさまざまです。常勤スタッフは700人、一線で活躍するボランティアは1700人にも上ります。また、分娩台など多くの設備が日本政府の資金協力で設置されています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 医師ナドゥ・メコネン(Nadew Mekonnen)さんの話を紹介します。 Q:医師になったきっかけは何ですか。 A:母は7人子どもを産みましたが、生き残ったのは2人だけで、その一人が私です。当時、特に地方では予防接種ができなかったり、衛生状態が悪かったり、近くに病院がなかったりして、多くの子どもが命を落としていました。そんな状況を変えたいと思って医師を志しました。 Q:なぜこのクリニックで働いているのですか。 A:母はもちろん、すべての女性を尊敬しており、女性たちのために働きたいからです。女性たちは家事や育児に忙しく、お金も節約し、自分のためには病院に行きません。そんな女性たちのためにサービスを提供できるこの病院で働けることに大きなやりがいを感じています。また、多くの病院では一度に一つのサービスしか受けられないのですが、ここではそれぞれのニーズに応じて、一度に三つ以上のサービスを提供しています。また、多くのサービスが無料であることから、患者さんの満足度が高いことがうれしいです。 Q:課題は何でしょうか。 A:スタッフはよく訓練されていますが、人数が足りず、部屋も不十分です。家族計画や性暴力被害者へのカウンセリングなど、長期的支援が必要なサービスも多いので、長期的に質の高いサービスを持続できるような資金確保が課題です。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: エチオピアでは今も18歳未満の女児の「児童婚」や、女性性器切除(FGM)の慣習が一部で残り、IPPFエチオピアはジェンダー平等や女性のエンパワーメントの観点でも、政府と連携して活動しています。セックス・ワーカーと呼ばれる性産業従事者に特化したサービスも提供しています。 最近は特に若者を対象にした事業を重視しています。気軽に相談に来られる「ユース・センター」の設置や、児童・生徒対象に卓球や演劇などのクラブをつくって活動し、男女ともに楽しみながら、自分の権利と健康を守ることを促しています。 (アドボカシーグループ 宮地佳那子)

Neonatal device IPPF Ethiopia
news_item

| 07 September 2016

エチオピアで女性と若者の健康と権利を守るNGO

※ こちらの記事は、IPPF東京連絡事務所を務める公益財団法人ジョイセフのウェブサイトに掲載されたものを、許可をいただいて転載しています。元の記事はこちらです。 2016年8月19日 2016年8月上旬、国際家族計画連盟(IPPF)のエチオピア加盟協会「IPPFエチオピア」の本部と併設のクリニックを、ジョイセフ職員が訪ねました。 IPPFエチオピアは、現地ではFamily Guidance Association of Ethiopia(FGAE)の名で広く知られています。 IPPFエチオピアは、IPPFが取り組むセクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR、性と生殖に関する健康と権利)を推進するNGOです。アフリカの非常に多くの国にあるIPPFの加盟協会の中でも、大きな組織の一つです。 日本の約3倍の国土に支部が8つあり、クリニックは55あります。若者への包括的性教育、医療従事者の研修、クリニックでの避妊や妊娠・出産へのアドバイスや子宮頸がん検診など、事業は実にさまざまです。常勤スタッフは700人、一線で活躍するボランティアは1700人にも上ります。また、分娩台など多くの設備が日本政府の資金協力で設置されています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 医師ナドゥ・メコネン(Nadew Mekonnen)さんの話を紹介します。 Q:医師になったきっかけは何ですか。 A:母は7人子どもを産みましたが、生き残ったのは2人だけで、その一人が私です。当時、特に地方では予防接種ができなかったり、衛生状態が悪かったり、近くに病院がなかったりして、多くの子どもが命を落としていました。そんな状況を変えたいと思って医師を志しました。 Q:なぜこのクリニックで働いているのですか。 A:母はもちろん、すべての女性を尊敬しており、女性たちのために働きたいからです。女性たちは家事や育児に忙しく、お金も節約し、自分のためには病院に行きません。そんな女性たちのためにサービスを提供できるこの病院で働けることに大きなやりがいを感じています。また、多くの病院では一度に一つのサービスしか受けられないのですが、ここではそれぞれのニーズに応じて、一度に三つ以上のサービスを提供しています。また、多くのサービスが無料であることから、患者さんの満足度が高いことがうれしいです。 Q:課題は何でしょうか。 A:スタッフはよく訓練されていますが、人数が足りず、部屋も不十分です。家族計画や性暴力被害者へのカウンセリングなど、長期的支援が必要なサービスも多いので、長期的に質の高いサービスを持続できるような資金確保が課題です。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: エチオピアでは今も18歳未満の女児の「児童婚」や、女性性器切除(FGM)の慣習が一部で残り、IPPFエチオピアはジェンダー平等や女性のエンパワーメントの観点でも、政府と連携して活動しています。セックス・ワーカーと呼ばれる性産業従事者に特化したサービスも提供しています。 最近は特に若者を対象にした事業を重視しています。気軽に相談に来られる「ユース・センター」の設置や、児童・生徒対象に卓球や演劇などのクラブをつくって活動し、男女ともに楽しみながら、自分の権利と健康を守ることを促しています。 (アドボカシーグループ 宮地佳那子)

Rym Fayala
news item

| 26 September 2016

Interview 「住民がスタッフ 紛争地でも活動継続」

IPPF(国際家族計画連盟) アラブワールド地域事務局 渉外部長 リーム・ファヤラさん チュニジア出身で、医師でもあるリーム・ファヤラさんに、中東地域のセクシュアル/リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)について聞きました。 ― アラブ地域のSRHR の現状を教えてください。 アラブ世界地域には14カ国にIPPFの加盟協会があり、現在、そのうち5カ国が紛争国です。これらの国では、紛争発生以後SRHRの状況が悪化しています。シリアには400 万人の難民がおり、国内避難民は700 万人にも及びます。国内避難民の75%が女性と子どもと推定されています。難民や国内避難民の女性たちは、医療施設の破壊や医師の不在などにより、SRHR関連サービスを含む通常の保健医療サービスが受けられないだけでなく、性暴力に遭って精神的なトラウマも抱えるなど、紛争のSRHRへの影響は、非常に深刻です。 シリア以外でも、性暴力の経験者はヨルダンやエジプトで3 人に1 人、チュニジアでは47%にも上るなど、課題が多くあります。 ― 性暴力のほかに、女性の健康に関する課題は特に何がありますか。 まず高い妊産婦死亡率が挙げられます。ソマリアでは、出生10 万あたり約800 人(2013 年データ)と非常に高い状態です。また、紛争地では妊産婦死亡率が悪化しました。シリア危機では、2010 年に出生10 万あたり56 人だった妊産婦死亡率が、2013には65 人になってしまいました。 またアラブ地域では、18 歳になる前に結婚する女性も数多くいます。これは親が性犯罪や性暴力から「娘を守るために」早く結婚させるという現実を反映しています。女性性器切除(FGM)もモーリタリア、スーダンなどでいまだに深刻です。 ― IPPF の加盟協会はどのような活動をしていますか 移動クリニックと診療所を通して、SRHRを中心とした保健サービスとカウンセリングによる精神的ケアを提供しています。シリアでは、2013 年と2014 年に大幅にサービス提供件数を増やすなど、ニーズに応じて活動を拡大しました。実際に現場で活動しているスタッフは、地元住民でもあり、地域に根付いていますから、IS(イスラム国)に支配されるようになった地域でも、活動を継続しています。 このように非常に混乱した紛争地で人々のSRHRニーズに応える活動ができている団体はIPPFのほかに類を見ません。 また、スーダンやモーリタニア等では、IPPF・日本信託基金(JTF)の支援によるプロジェクトを実施しており、日本政府に感謝しています。サービス提供数は増やしていますが、すべてのニーズには応えられていません。今後もさらなるご支援を心よりお願いいたします。   <プロフィール> アドボカシーや資金調達などを担当。チュニジア保健省「人口とリプロダクティブヘルス・研修・研究センター」所長、国連人口基金(UNFPA)チュニジア事務所でのリビア人難民に対するリプロダクティブヘルス関連支援のコーディネーターなどを経て現職。   *この記事は、公益財団法人ジョイセフが発行するリプロダクティブ・ヘルスに関するオピニオンマガジン、アールエイチ・プラス(RH+)に掲載されたインタビュー記事を、許可を得て転載しています。

Rym Fayala
news_item

| 30 March 2016

Interview 「住民がスタッフ 紛争地でも活動継続」

IPPF(国際家族計画連盟) アラブワールド地域事務局 渉外部長 リーム・ファヤラさん チュニジア出身で、医師でもあるリーム・ファヤラさんに、中東地域のセクシュアル/リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)について聞きました。 ― アラブ地域のSRHR の現状を教えてください。 アラブ世界地域には14カ国にIPPFの加盟協会があり、現在、そのうち5カ国が紛争国です。これらの国では、紛争発生以後SRHRの状況が悪化しています。シリアには400 万人の難民がおり、国内避難民は700 万人にも及びます。国内避難民の75%が女性と子どもと推定されています。難民や国内避難民の女性たちは、医療施設の破壊や医師の不在などにより、SRHR関連サービスを含む通常の保健医療サービスが受けられないだけでなく、性暴力に遭って精神的なトラウマも抱えるなど、紛争のSRHRへの影響は、非常に深刻です。 シリア以外でも、性暴力の経験者はヨルダンやエジプトで3 人に1 人、チュニジアでは47%にも上るなど、課題が多くあります。 ― 性暴力のほかに、女性の健康に関する課題は特に何がありますか。 まず高い妊産婦死亡率が挙げられます。ソマリアでは、出生10 万あたり約800 人(2013 年データ)と非常に高い状態です。また、紛争地では妊産婦死亡率が悪化しました。シリア危機では、2010 年に出生10 万あたり56 人だった妊産婦死亡率が、2013には65 人になってしまいました。 またアラブ地域では、18 歳になる前に結婚する女性も数多くいます。これは親が性犯罪や性暴力から「娘を守るために」早く結婚させるという現実を反映しています。女性性器切除(FGM)もモーリタリア、スーダンなどでいまだに深刻です。 ― IPPF の加盟協会はどのような活動をしていますか 移動クリニックと診療所を通して、SRHRを中心とした保健サービスとカウンセリングによる精神的ケアを提供しています。シリアでは、2013 年と2014 年に大幅にサービス提供件数を増やすなど、ニーズに応じて活動を拡大しました。実際に現場で活動しているスタッフは、地元住民でもあり、地域に根付いていますから、IS(イスラム国)に支配されるようになった地域でも、活動を継続しています。 このように非常に混乱した紛争地で人々のSRHRニーズに応える活動ができている団体はIPPFのほかに類を見ません。 また、スーダンやモーリタニア等では、IPPF・日本信託基金(JTF)の支援によるプロジェクトを実施しており、日本政府に感謝しています。サービス提供数は増やしていますが、すべてのニーズには応えられていません。今後もさらなるご支援を心よりお願いいたします。   <プロフィール> アドボカシーや資金調達などを担当。チュニジア保健省「人口とリプロダクティブヘルス・研修・研究センター」所長、国連人口基金(UNFPA)チュニジア事務所でのリビア人難民に対するリプロダクティブヘルス関連支援のコーディネーターなどを経て現職。   *この記事は、公益財団法人ジョイセフが発行するリプロダクティブ・ヘルスに関するオピニオンマガジン、アールエイチ・プラス(RH+)に掲載されたインタビュー記事を、許可を得て転載しています。